国内 2022.04.26

「5時、6時、30度の声で分かる」。SO中尾隼太が話す、ブレイブルーパスのコミュニケーション

[ 編集部 ]
「5時、6時、30度の声で分かる」。SO中尾隼太が話す、ブレイブルーパスのコミュニケーション
視野広くプレーする中尾隼太。(撮影/松本かおり)



 リーグワンのプレーオフ進出を懸けたトップ4争いが熾烈だ。
 4月22日から24日にかけておこなわれた第14節の戦いを終え、東京サンゴリアス、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、埼玉ワイルドナイツの3チームが4強確定となっている。

 東芝ブレイブルーパス東京、横浜キヤノンイーグルス、トヨタヴェルブリッツが、残る1席を争う。
 その中で第14節にチームの状態が良いことを示したのがブレイブルーパスだった。

 NTTドコモレッドハリケーンズ大阪を35-7で退けた。
 前半15分に強固で巧みなモールで先制トライを奪うと、その4分後にはラインアウトから攻め、BKが見事なパスワークで防御突破。最後はSH杉山優平がインゴールに走り込んだ。

 29分にもトライ、コンバージョンキックを追加して21-0とリードを広げる。
 38分、CTBセタ・タマニバルが危険なタックルによりレッドカード(退場)を受け、14人になるも、一人ひとりの仕事量を増やして後半も危なげなく戦い抜いた。

 ボーナス点を含む勝ち点5を積み重ねたブレイブルーパス。
 シーズン終盤を迎え、攻守ともに意思統一されてきたチームの中心にいるのがSO中尾隼太(はやた)だ。
 レッドハリケーンズ戦ではプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれるパフォーマンスを見せた。

 40分以上を14人で戦いながらも勝利を手にしたゲームマネージメント力が光った。
 本人は、「早い時間から人数的に苦しい状況になったので、チームとしてやるべきことを具体的に決めました」と振り返る。

「アタックでは、しっかりとボールを持って攻め続ける。ディフェンスでは(一人少ないので)うしろのスペースをカバーする人を減らし、前に重点を置いて守る。それらを実行し、受けにまわらずプレーすることを心がけました」
 SH、SO、FBを中心に、うまくコントロールできたという。

 中尾は2017年からチームに加わった27歳。長崎中央ラグビースクール、長与ヤングラガーズでこのスポーツの楽しさを知った。
 長崎北陽台、鹿児島大を経てブレイブルーパスへ。セブンズ日本代表に選ばれたこともある。

 シーズンの深まりに合わせて好調さを高めるチームについて、「スキルセットが上がったことで、安定して良いパフォーマンスができるようになっている」と分析する。

 ディフェンスに関しては、新任のアリスター・ロジャース コーチの存在が大きい。
「前に出て止める防御をプレシーズンからやってきています。考え方もタックル自体のスキルもトレーニングで良くなった。自信をもってやれています」

 アタックに関しては、トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ、ジョー・マードック攻撃担当コーチが提唱していた攻め方を実現できるベーシックスキルを得たのが大きい。
 時間をかけて、キャッチ、パス、視野が向上した。

「それに加え、より詳細なコミュニケーションをとれるようになっています。例えばパスについてのコールも、フラット、ディープだけでなく、5時の方向(に放れ)とか、6時とか、30度(の深さで)など、細かくなりました。パスする方も、(ターゲットを)見ずに放れるようになっています」

 中尾自身は今季14節までにおこなわれた13戦すべてでプレーしている。
 トム・テイラーとの併用もあり、10番を背負う試合もあれば、12番のときも。
 しかし、その対応も問題なくこなす。

「10番と12番でコントロールしていくラグビーをやっています。なので、あまり大きな違いはない。ただ、10番のときはコントロールをより意識し、12番のときはフィジカルなプレーを意識します。その両方の準備はいつもしています」

 シーズン大詰め。勝ち上がっていくチームには、聡明な司令塔の存在が不可欠だ。
 この人の存在は、ブレイブルーパスの歩んでいく先を照らす。

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