成長の階段、着々と。松山聖陵、花園に続き、選抜でも秋田工に勝利
花園に続いて、熊谷でも大仕事をやってのけた。
全国制覇15回(全国最多)を誇る名門を撃破した。しかし本人たちの興奮は、周囲の大人たちほどの大きさではないようだ。
ただ、チームの前進は確かに感じた。
3月25日(金)に開幕した全国高校選抜ラグビー大会が26日(土)にもおこなわれ、ベスト8が決まった。
その8強を決める2回戦と、1回戦敗戦チーム同士の試合もおこなわれた。その中のひとつに、3か月前に大阪でおこなわれた試合の再戦があった。
松山聖陵(愛媛)が秋田工に31-19のスコアで勝利した。
2021年12 月28日、両校は花園でも対戦。そのときも19-12で松山聖陵が勝っている。
花園(冬の全国大会)出場回数を比べれば、秋田工の69回(全国最多)に対し、松山聖陵は6回。
選抜大会の出場回数も前者は今回が13回目で後者は3回目と、その歴史、実績には大きな差がある。
しかし、松山聖陵の選手たちは、再戦の場でも堂々としていた。秋田工の選手たちはリベンジする気持ちで燃えていただろう。
その気持ちをはね返した。
序盤から試合の流れを掴んだ。
先制機は前半3分。狙ったPGがゴールポストに当たり、転がったボールを攻める。
SO中村仁主将が防御突破し、インゴールに入った。
12分には、自陣での防御からターンオーバーして攻撃に転じる。フェーズを重ね、最後はPR新屋光司がトライラインへ走った。
秋田工に1トライを返されるも、30分過ぎにはHO井上魁らFWの前進から好機を作り、最後はWTB田川陽生がトライ。前半を24-5で終え、大きく勝利に近づいた。
後半は、FWが踏ん張り、CTB金森皇成らBKの仕掛けで2トライを奪取した秋田工の反撃を受ける時間もあった(24-19と迫られる)。
しかし慌てることはなかった。
29分にNO8植村颯のトライで突き放した。
コロナ禍で愛媛県大会、四国大会が中止となり、実戦は、尾道との練習試合のみ。
石見智翠館、高知中央らとの合同練習をおこなうことはできたが、十分な準備を経て臨めた大会ではなかった。
そんな中で前日の選抜大会初戦で強豪、桐蔭学園と対戦。3-57と敗れた。ミスも出た。
悔しい試合展開に、試合中、ミスをした選手に対してのネガティブな空気が漂うケースもあったけれど、同日夜のミーティングでチームがまとまる。
それが秋田工戦勝利に結びついた。
チームを率いる渡辺悠太監督が、今大会までの道程を話す。
石見智翠館らとの合同練習時、思うようなパフォーマンスを出せずにチームの結束が怪しくなったという。
「一人ひとりの、勝ちたい、勝ちたい、という気持ちがバラバラでした」
そのまま突入した選抜大会。桐蔭学園に敗れ、中村主将が全員に向けて話した。
「ミスした選手を責めるのではなく、みんなでカバーするチームになろうや、とキャプテンが言いました。桐蔭戦は負けましたが、前に出れば止めることができたし、ボールを持てば相手を弾いて前進できるシーンもあった。一人ひとりがしっかり仕事をすれば戦える、と分かったはずです」(渡辺監督)
昨年度チームの先発メンバーには11人の3年生がいた。その選手たちが抜けてどうなることかと思っていた同監督。
しかし、選抜大会2試合を戦ってみて感じたのは、新学年に上がろうとしている選手たちの成長だ。
それは、「日頃の練習は間違っていないんだな」という確信も呼んだ。
監督が「成長を感じる」という中村主将は落ち着いていた。
秋田工戦の勝利を「伝統校に勝つのは嬉しい」と言いながらも浮かれることなく、東福岡や桐蔭学園、石見智翠館、尾道など、いま自分たちが競い合っている強豪校から目を逸らすことはない。
「前に出れば強豪チームでも止められる、と分かったのは、今大会の収穫でした。もっともっとチーム力を上げていきたいですね。試合中に、よく喋ってコミュニケーションが取れている選手と、そうでない選手がいるので、そのあたりも修正していきたい」
春には20人前後の新しい仲間が加わる。
また一段上がった自分たちのスタンダードを伝える。