自然体で引っ張る。濱里耕平[宗像サニックスブルース]は、こんな人
今季初めての出番はチームにとっての3戦目、2月12日の清水建設江東ブルーシャークス戦だった。
19-26。今季がブルース12年目となる濱里耕平のリーグワンデビュー戦は敗戦で始まった。
背番号11のベテランは、後半29分までピッチに立った。
思うようにゲームを運べなかった一戦。アウトサイドに立つ濱里が活躍する局面はあまりなかった。
しかしピンチの場面で判断よく飛び出した。背走して相手を止めた。
できることは、すべてやった。
こんな日もある。
経験値豊富な男だ。きっと、そう割り切って次へ足を進める。
過去、満足いくシーズン、不甲斐ないシーズンのどちらもあった。ビッグゲームに喜んだこともあれば、情けなくなるような試合も。
良いことも悪いことも、その試合が終われば過去の話。
うまくいったことは次も。うまくいかなかったことは改善する。それを繰り返してきた。
「よくここまでやってこられた」
長いプロ生活を振り返り、そう実感する。
「才能はないけど、ちょっと足が速い。それが理由ですかね」
いつも飄々としている。
昨季からWTBで出場することが多い。トップリーグ2021では練習はSH、試合はWTBという状況にもかかわらず、開幕戦を含め3トライをマークした。
「若い選手たちが控えています。結果を残さなかったら、なんで年をとっているあの人が、となりますから」
今季はプレシーズンからWTBに専念し、準備を進めてきた。
33歳。移籍選手も多く加わり、周囲には若い選手が増えた。
ベテランとして、自然体で気づいたことを話す。
ちょっとしたコミュニケーションの中で経験を伝える。
年齢を重ね、自身の体力について変化を感じている。
「長い距離をトップスピードで走るのは少し難しくなってきましたが、体力はアップしています。(S&Cコーチの)アダム・キーンの練習のおかげです」
最近はサプリメントを摂るようになった。体のケアへの注力は、若い頃との大きな違いだ。
沖縄県出身。名護高校から流通経済大に進学も、肩の負傷などもあって1年生の途中で地元に戻る。やんばるクラブでプレーした後、ふたりの兄が活躍していたブルースに入った。
ルーキーイヤーの2010年から、長男・祐介、次男・周作とともに、三兄弟揃ってピッチに立った。
現在、長男はFWコーチ(ラインアウト担当)としてブルースを支え、次男は地元へ戻った。
濱里三兄弟の末弟は、兄弟の中で最後の現役選手になった。応援してくれる人たちのためにも長く走り続ける。
ただ、「あと何年やる、でなく、結果を出して、1年、1年積み重ねていきたい」と、日々の練習から出し切って生きていくことを誓う。
プロとしての矜持だ。
今季のブルースには、新しく加わった力が多い。その移籍してきた選手たちとの関係性も深まりつつある。
清水建設江東ブルーシャークス戦には敗れるも、一日ごと、試合ごとに互いの理解度は深まっている。
ディビジョン3といえども、各チームの実力は思っていたより近いとわかった。
それでも濱里は、「自分たちのラグビーをやれたら、どのチームにも勝てる」とキッパリと言い切る。
ブルースで127試合(トップキュウシュウなどの下部リーグ戦なども含む)、トップリーグに93試合出場してきた。
大切なのは、自分たちの力を出し切ること。やり切って勝てないのなら、もっと力をつける意外に道はないと知っている。
「ファンが面白いと思うラグビーをするチームにならないといけない」
リーグワンが発足して思うことだ。
新しいリーグが目指すように、個々のチームが収益を上げられるようになるためには、まず、各試合をファンがまた見たいと思うようなエキサイティングな時間にしなければ。
一朝一夕では実現できないことと、全員が知っている。でも、やり甲斐がある。
自分のことだけを考えていればいい年齢は過ぎた。このリーグに足を踏み入れたからには、これまで以上に魅力あるチームになるための力も注ぎたい。