しびれる試合をファンへ。清水建設江東ブルーシャークス、みなぎる自信
試合を重ねる。勝利が増える。自信が深まる。結束が高まる。
青いジャージーがホストスタジアムで劇的な80分を過ごして、また、ファンを笑顔にさせた。
3月5日、清水建設江東ブルーシャークスが夢の島競技場で九州電力キューデンヴォルテクスに29-22のスコアで逆転勝ちした。
リーグワンのディビジョン3で今季5勝目を挙げた(5勝2敗。不戦勝1を含む)。豊田自動織機シャトルズ愛知に次ぐ2位につけ、ディビジョン2昇格のかかる入替戦進出が見えてきた(3位以上)。
この日は相手に15点を先行される展開だった。風下に立った前半、ヴォルテクスのペースで試合を進められた。
しかし7-22で入った後半、ブルーシャークスは追い風を受けたこともあり優位にゲームを進めた。
残り5分で22-22と同点に追いつく。
後半39分にCTBディック・ウィルソンが勝ち越しのトライを決めて勝利をつかんだ(FBガース・エイプリルのGも成功)。
文字にすれば数行の逆転劇。
しかし実際は簡単ではなかった。
後半立ち上がりに集中力を見せてFL長谷銀次朗のトライ、SOオルビン・レジャーのG。11分のPGで5点差に詰めるも、同点に追いついたのは同35分だった。
その間の20分以上は、攻め込んではボールを奪われ、ミスも出た。歯痒い時間も長かった。
ホスト&ビジター制で対戦するリーグワン。1月23日に福岡・博多の森陸上競技場で戦ったときには12-17と競り負けた。
ブレイクダウン時に圧力を受けて後手に回った敵地での80分を受け、今回はそこに注力をして準備し、ピッチでも激しく体をぶつけた。
大隈隆明監督は、「魂のこもったプレーには見習うことが多かった」とヴォルテクスを称え、「ホームでしびれる試合ができたのも九電さんのお陰」とリスペクトの気持ちを口にした。
そして、自軍の選手たちの気持ちの充実を愛でた。
プレシーズンマッチではディビジョン1チームと4試合、ディビジョン2チームと3試合と、力のある相手に体をぶつけ続けた。
1勝6敗の結果も、プレー強度が高まった。技術を学び、伸ばせた。その成果が今シーズンのパフォーマンスに反映されている。
日常の変化も大きい。
同監督は、昨季までの練習の空気を甘かったと認める。今季はチームスローガンを「ReBORN」(リボーン)にした。闘う集団に生まれ変わるためだ。日々、緊張感ある練習をするようになった。
監督、麻田一平ヘッドコーチをはじめとした指導陣が練習で厳しさを打ち出す。昨春入社の若さながら今季の主将を務めるFL髙橋広大(桐蔭学園→明大)らリーダー陣がそれに応える。選手一人ひとりの意識も変わり、チームの空気が変わっていった。
緊張感ある空気が漂うのが当たり前になった。
髙橋主将は、ヴォルテクスとの第2ラウンドに勝った試合を振り返り、「最後に勝ち切れたことで、また成長できたと思う」と話した。
「前半は規律を守れず、自分たちで自分たちの首をしめた感じでした。ボールを継続できればスコアを重ねられると思っていたので、後半は反則を減らし、敵陣で戦うことを徹底しました」
後半の入りの良さが流れを引き寄せた。
キャプテンも、日常がピッチでの勝敗に直結していると話す。曖昧な練習はなくなった。
PGを決めれば勝てるぞ。トライを取らないと逆転できない。そんなシチュエーションを設定して実戦的なトレーニングをおこなうことで、意思統一とギリギリのプレーができるようになってきている。
この日のラスト数分で追いつき、追い越せた時間を、「全員が同じ絵を見て動けていた」と振り返る。
社員選手は仕事とラグビーの両立を実行する。
クラブ化しているチームだから、他社で働く者もいる。その選手たちも、それぞれの職場でしっかり働く。遅れての練習参加、残業で欠席の日もある。
しかし、オンラインミーティングや首脳陣からの個々へのアプローチにより一体感は強い。
外国出身選手も含めて結束力が強いのは、どうしてチームが仕事とラグビーの両立に取り組んでいるのか、その理由と理念を説明し、理解してもらっているからだ。
チーム方針を理解した選手たちはそれに賛同し、練習準備などのサポートを惜しまない。
駅からスタジアムへ向かう道案内の看板を部員たちが掲げていた。
会場入り口でのパンフレット配りも試合に出ない外国出身選手が担当し、試合後の片付けも選手、チーム関係者が一緒になっておこなう。
ピッチ内外のあちこちにチーム愛を感じる光景があった。
「リーグワンではディビジョン3からのスタートとなりましたが、ディビジョン2に上がりたいし、そこで戦っていける自信があります」(髙橋主将)
若きキャプテンは、「1年で結果を残せなければ次はない、という覚悟でやっています」と話す。
仲間を信頼しているからだろう。堂々としていた。