国内 2022.02.15

市役所職員のジャッカル。釜石シーウェイブスの河野良太は「もっと上のレベルで」

[ 向 風見也 ]
市役所職員のジャッカル。釜石シーウェイブスの河野良太は「もっと上のレベルで」
ブレイクダウンで奮闘する釜石シーウェイブスのFL河野良太(撮影:大泉謙也)


 人呼んで「聖地」。東京は秩父宮ラグビー場に立ったのは、約4年ぶりのことだ。

 河野良太は2月13日、雨と風にさらされ献身していた。

 この日の公式入場者数は「979人」。試合終盤にその旨を告げる場内アナウンスは、悪天候のもと訪れたファンに謝辞を述べる。

「残り時間が少なくなりました! 大きな拍手を!」

 河野がこれ以前に秩父宮に立った最後の日は、2018年1月2日。大東大主将として大学選手権の準決勝に出て、「19,279人」の歓声に包まれていた。あれから月日が流れ、今度はリーグワン・ディビジョン2の第4節に挑んでいた。

「久しぶりにこの秩父宮のグラウンドで試合ができて、しかも勝つことができて嬉しかったです」

 本人の言葉通り、河野がゲーム主将を務めた釜石シーウェイブスは今季初勝利。マツダスカイアクティブズ広島との未勝利同士の一戦を、30-3で制した。

 河野は、チームがこだわるモールから2トライを奪取。守っても得意のジャッカルで魅した。「ジャッカルは、常に狙っているなかで、いいタイミングで入れたと思います」と、プレイヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した。

 7名の記者が参加したオンライン会見へ登壇し、回線の向こう側へ肉声を届けた。

「チームは連敗中。勝ちにこだわる気持ちで試合に臨みました。やるべきことを80分間できたので、こういうゲームができました」

 身長169センチ、体重88キロ。小柄でも当たり負けしたくないとの思いを、公式記録ににじませる。春日丘高(現:中部大春日丘高)を経て大東大入りし、FLとしてミサイルのタックルを重ねた。

 卒業後は中部電力で競技を続けていたが、「もっと上のレベルでラグビーをやりたい思いがあった」。現所属先に移ったのは2020年。26歳のいまは、釜石市役所に勤めながら選手生活を送る。

「普段は朝、トレーニングして、午前中は仕事をして、午後からチームの練習という生活を送っています。市役所ではスポーツ推進課のラグビーのまち推進係という部署にいまして、仕事でもラグビーに関係することをやっています」

 19日の第5節では、花園近鉄ライナーズと激突。敵地の東大阪市花園ラグビー場で、オーストラリア代表SOのクウェイド・クーパーらと対峙しそうだ。

「今日をスタンダードにしてステップアップしていく。次は今日よりいいゲームをして、勝ちたいと思います。シーウェイブスは、いろいろなところに遠征に行かないといけないチームであり、それを言い訳にはできない。短い時間の練習でも試合をイメージしてやることを常に意識しています」

 秩父宮で感慨に浸った瞬間は、すでに過去のものとしている。

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