春はまだまだ先!? トゥールーズ、試練の冬
「ボールは良いチームの方にバウンドする」と言ったのは、トゥールーズHCのユーゴ・モラだ。1月15日のチャンピオンズカップのワスプス戦後のことだった。
昨年度のフランス国内、そしてヨーロッパチャンピオンのトゥールーズは、今その反対側にいる。
昨年11月のオータムネーションズ・シリーズ後の1週間の休暇を終え、久しぶりにクラブに戻ってきた代表選手が揃ってメンバー表に名を連ねたのが、12月5日のトップ14のボルドー戦。
ボルドーの激しいプレッシャーの下、デュポンも封じ込められ状況を打破できず、7-17でボルドーに敗れた。
翌週12月11日はチャンピオンズカップの第1節、コロナ感染で主力を揃えられなかったカーディフに39-7で勝った。
しかしその後、トゥールーズは勝てていない。
翌週から仏英間での国境を超えた移動に隔離が義務付けられたため、ホームでのワスプス戦が中止になった。
その翌週は、クリスマスの翌日に3万人収容のスタジアム・ド・トゥールーズに会場を移し、スタッド・フランセと戦うはずだった。しかし、多くのイベントを準備していたその試合も、相手に感染者が発生したために試合当日に延期が決定された。
年明けのアウェーのクレルモン戦は13-16で負け、翌週のホームでのモンペリエ戦は、モンペリエに多数感染者が発生したため、またもや延期に。しかもトゥールーズにも感染者が出て、翌週の練習はマスクをしたまま、少人数でコンタクト無しで実施した。
本来のリズムも、試合の感覚も取り戻せないまま、イングランドのワスプスと敵地で対戦。22-30で敗れた。ワスプスは前週にそれまで今季無敗だった同じイングランドのレスターを破って勢いに乗っていた。
「明らかにエネルギーはワスプスの方が上回っていた。リズムが取り戻せていないだけだと思いたいが、気に入らないことがいくつかあった。例えばレフリーの判定に全員が両手を上げてアピールしていた。あんなのうちじゃない! プレーに集中して状況を立て直さなければならないのに」とモラHCはプレーよりもチームの心構えを指摘した。
「いいチームには集団力学が働いている。試合を重ねラグビーをすることが、本来の自分達を取り戻すための最良の方法だが、6週間で2試合では足りない。ボールがバウンドする側のチームになるためには、謙虚に努力を続け、チームの一体感を取り戻さなければならない」
ところがその後、クラブ内で感染者が増え続けた。
練習も満足にできない状態だったが、チャンピオンズカップ決勝トーナメント進出がかかったカーディフ戦前日には、十分に競争力のある23人のメンバーを発表し準備を整えていた。それでも不戦敗と判断された。
しかもまた、ホームでの試合だ。ホームの試合がなくなるとチケット収入がなくなる。クラブ経営の面でも大きな打撃だ。他チームの結果のおかげで、なんとか決勝トーナメントには進出できたが、トゥールーズらしくないのだ。
そして翌週1月30日、やっとホームで試合ができた。
12月のカーディフ戦の後、戦列を離れていたデュポンも復帰し、またコロナに感染した後の隔離期間だったため代表合宿に参加していなかったンタマック、バイユ、クロスらの代表選手も揃って臨んだラシン92戦だったが勝てなかった。
終始プレッシャーを受けてミスを繰り返し、フェーズを重ねることができない。セットピース、ラックも支配された。「結果よりも内容が心配だ」とスタッフの口から不安が漏れた。
今週からデュポンらもシックスネーションズの準備合宿をしている代表チームに合流し、9人の主力選手が不在になる。うち2人がフッカー(マルシャン、モヴァカ)だ。彼らの不在の間に延期された試合も含めてトップ14の7試合が予定されている。
試練の冬だ。
春の日差しが感じられる頃には、再びボールがバウンドしてくれる側のチームになっているだろうか。