敗戦の中で光った朝日大のルーキー。CTB渡部雄大の夢と目標。
12月12日に花園ラグビー場でおこなわれた全国大学選手権3回戦。
1回戦から勝ち上がった朝日大は、同志社大に7―46で敗れた。
結果的に大差をつけられたが、スコア以上の健闘を見せた。特にディフェンスでは懐に突き刺さるタックルで何度もボールを落球させ、ブレイクダウンでターンオーバーも成功した。何よりどれだけ点差を離されても、集中力を切らさなかった。
最初で最後のスコアは後半20分。初めて敵陣22㍍ライン内に入り、一発で仕留めて見せた。NO8サムエラ・ワカヴァカらの突進から、最後はSH鈴木大気が押し込んだ。
吉川充監督は「結果は本当に残念だけど、大野(京介)キャプテン中心に最後まで諦めないラグビーをたくさんのお客さんに見ていただけた。1年間頑張って良かったと思えるゲームでした」と選手たちを労った。
10年連続10回目の出場となったが、初の3回戦突破とはならなかった。またしても主要3リーグの壁に阻まれた。
2001年から同大学の指導にあたる吉川監督が思いを語る。
「有名な高校から選手たちが集まる学校と互角に戦うには、タックルや体を張ることをやり続けないと。それができないと、こういうところには来られない。ただここに負けるためには来ていません。だからチームの中で本当に体を張れる選手を選んでいます」
そこで選ばれた唯一の1年生が、CTB渡部雄大だった。入学直後から先発の座を勝ち取り、この日は13番をつけて先発した。「久しぶりの花園で、久しぶりに観客のいるところでラグビーができた。いい緊張感を持って臨めました」と話す。
もう一人のCTB、江藤岳とともにディフェンスラインを統率。世代屈指のランナーを擁した同志社大のアタックに対して、引き締まったディフェンスを見せた。
渡部は前半の20分過ぎに好タックルで相手の落球を誘い、後半10分過ぎにもラックで圧力をかけてターンオーバーにつなげた。泥臭さも光った。こぼれ球をセービングして確保したことが後半20分のトライにつながった。
170㌢、88㌔。身長を補うために高校時代から鍛え上げたハードワーク、低いタックルが身上だ。
「タックルしてすぐリロードする、それを連続で何本もできるようなハードワークをする。もう少しできたかなという心残りはあります。何本も勢いよく当たれはしたけど、返せなかったり、もっとターンオーバーまでつなげたかった」
愛媛の新田高校でも1年時からレギュラーを張り、花園の地を踏んだ。昨年は四国のオータムチャレンジトーナメントを制して、2年ぶりに全国高校大会に出場。
1回戦で城東にロスタイムで逆転負けを喫した(29―31)。後輩のWTB小倉亮太が4トライを奪った試合だ。今日はそれ以来の花園第1グラウンドだった。
「本当に悔しい思い出です。でもまたこの最高の舞台でできてすごく嬉しかった」
続けてこうも言った。
「でもまだまだここに来ることが多いなあと(笑)」
進学先に朝日大を選んだのは、大きな夢と目標があったからだ。
「(大学ラグビーの聖地とも呼ばれる)秩父宮でプレーしたいんです。この3回戦を勝って次のステージにいくのが自分の目標でもあり、チームの目標でもある」
夢はリーグワンでプレーすることだ。車関係の自営業をしている父の影響で、トヨタヴェルブリッツに強い憧れがある。だから愛知に近い岐阜にある朝日大を選んだ。「選手権にも出られる。良い環境だと思いました」。
「トヨタの社員研修はすごいと聞きました。僕もそこで働いて成長して、ラグビーもしたい。すべてにおいて日本一になりたい」
3回戦を突破するまでの距離感は掴んだ。渡部には挑戦する機会がまだ3回ある。
秩父宮に立てるまで、リーグワンでプレーできるまで、ハードワークはやめない。