国内 2021.12.07

9季ぶりの全国へ、近大最後のピース。山本秀[LO/FWリーダー]

[ 明石尚之 ]
9季ぶりの全国へ、近大最後のピース。山本秀[LO/FWリーダー]
近大LOの山本秀は今季、FWリーダーとしてPR紙森陽太副将(写真左)を支える(撮影:平本芳臣)

「個人の目標としてPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)を狙ってました。今季初のA戦でPOM取れたらかっこいいなと(笑)。絶対活躍したろって」

 屈託のない笑顔でそう話す。

 近畿大4年生のLO山本秀が戻ってきた。11月28日、関西リーグ最終節の関西大戦で今季初の先発出場を果たした。

 190㌢、100㌔。CTB福山竜斗主将が「本当に明るいプレーヤー。チームを一段と引き締まった雰囲気にしてくれる」と信頼を寄せる男だ。高校、U20日本代表、ジュニア・ジャパンと各カテゴリーの世代別代表も経験している。

 昨季の第2節(天理大戦)以来の公式戦出場に、「1年生の時から一緒に出ている4年生が多かったし、観客がいる中で久しぶりにラグビーができてとても楽しめた」と話す。
 山本は世代別代表や元BKの経験を活かし、アタック時はエッジに残る。そこで得意のオフロードや力強いボールキャリーでミスマッチを突き、9トライを奪う大勝に貢献した。

 近大は初優勝こそできなかったが、6勝1敗の2位でリーグを終えたのは2000年度以来の好成績で、9季ぶりの大学選手権出場も決まっている(12月18日vs慶大@秩父宮)。

 だがチームの躍進の裏で、山本は苦しんでいた。
 新チームが始まった4月上旬、体調を崩した。
「湯船に浸かってたら、いきなり左足が痺れて。次の日も練習したけど、気分が悪かった」

 違和感はありながらも、練習に行っては頭痛や吐き気で早退する日々が続いた。そして5月末に通院先の病院で倒れ、緊急入院した。
 脳脊髄液減少症だった。交通事故やスポーツなど、外からの強い衝撃によって起こりやすく、山本もおそらくタックルされた際に強く背中を打ったことが原因だった。

 3度の手術を受け、6月に退院。本格的に復帰したのは、秋シーズンに入る9月ごろからだ。「いまはラグビーに影響はありませんが、大変な3か月でした」。

 開幕戦の天理大戦、続く同志社大戦と、劇的勝利のグラウンドに立つことは叶わなかったが、「出ているメンバーを信じていた」。
 山本は10月2日のC戦で試合に復帰し、ジュニア戦でプレーを重ねるなど、多くの時間を下のカテゴリーで過ごす。
「そこにいる4年生の思いや頑張ってる後輩たちの応援も感じていた。(関大戦で)一生懸命やっている姿をプレーで見せるのが一番と思っていた」

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