横河武蔵野14−15東京ガス。強風下、80分間のしびれるディフェンス勝負
再戦は、これまでになく悔しい結果となった。
11月28日、トップイーストリーグAグループの横河武蔵野アトラスターズがホームグラウンド(東京・武蔵野市)で東京ガスと対戦し、トライは同数ながら1点差の惜敗を喫した。
堅守を貫き、前半はロースコアで抑え、後半は無失点で抑えた。
リーグ戦終盤、戦力が限られた中でチームNO.1のラインブレーカー・西橋誠人をFBにコンバートし、調子を上げている古田泰丈、廣渡将をWTBに配置。積極的にボールを運べる3人に可能な限りボールを触らせ、攻撃力をアップするというのが今回のプランだった。
後半の開始直後に司令塔の衣川翔大が負傷退場するという不運に見舞われた。衣川に代わってSOを務めた渡邉夏燦は、ゲームコントロール力を発揮。ブースターらによるパワープレーもチームにスイッチを入れた。
ゲームキャプテンを務めたFL金澤省太郎はハムストリングスが痙攣したまま、LO栗林宜正は指が脱臼したままの状態でプレーを続け、意地を見せた。
東京ガスは、開始早々PGで先制し、その後もボールキープの無限ループで、風下に立つ横河武蔵野を苦しめた。最初のトライが生まれたのは33分を過ぎてからだった。
ラインアウトモールを起点にHO小川一真がインゴールに飛び込み、0−8とする。38分には東京ガスの自陣内スクラムからテンポよくフェーズを重ね、敵陣深くまで攻め込む。FL鈴木達哉がゴールに持ち込んで点差を拡大。宗像のゴールも決まり、0−15で折り返した。
横河武蔵野は、前半の好守でリズムを良くしていた。後半に入り、風上に立つや反撃を開始した。
26分、相手陣内22メートルライン付近でのセットプレーからモールを組み、HO佐藤公彦がボールをキープ。力強くドライブして一気にゴールに迫ると、PR髙橋耕太、SO渡邉夏燦がつないだボールをWTB廣渡将が大外でキャッチし、インゴールに突っ込んでトライを奪った。渡邉のゴールも決まり、7−15とする。
42分、再びフォワード戦からモールで押し込み、LO正井伸幸の後押しを受けたHO佐藤公彦がフィニッシュし追加点。ゴールもねじ込み14−15に詰めた。
リスタートのボールを東京ガスが蹴ると、横河武蔵野は逆転ムードを加速させる。
自陣22メートルから怒涛の攻撃を仕掛けてたたみかけた。しかし、相手陣内15メートル付近まで攻め入ったラストワンプレーの最中、横河武蔵野がブレイクダウンで痛恨のペナルティを犯してしまった。
そのままノーサイドの笛が鳴り、熱闘は唖然とするほどあっけない幕引きとなった。
敗れたものの、NO8山田皓也は試合を通して攻守ともに身体を張り、波のない安定したプレーを続け、存在感を示した。
「80分間、出し切りました。ディフェンスは良い形でできていたので、あとの課題はアタックだと思います。
(ディフェンスは)こうしてロースコアに持ち込めたことが自信になりました。(アタックは)ラストワンプレーでトライを獲れば勝てるというところで、ペナルティを取られて負けてしまうというのは、詰めの甘さかなと思います」と悔しさを口にした。
FL清登明は、「エリアさえ取れていれば全然負ける気がしなかったので、後半攻め切れなかったのがちょっと悔やまれます」と話し、「前半は我慢、15点差で想定内。後半は風上だったのでエリアをとってキープ・ザ・ボールでやって行こうということを掲げていたんですけど、最後キープし切れずに終わってしまったような形ですね」と振り返った。
早稲田大学卒業後からチームに在籍し、10年目にして50キャップに到達した。
「ここまで来られたのも選手、スタッフ、家族の支えがあったからこそ」と感謝し、「チームに頼られている限りはラグビーをやり続けたい」と語った。
運動量とタックル回数が際立っており、阿多弘英アナリストも、「私は現役時代10番でした。セットプレーのディフェンスは、内側に清登がいるだけで心強かったです」と評価する。
清登本人は「体が小さいので、人より動いて、そこでみんなを楽にさせてあげないと。自分の存在意義がどんどん食い込まれていってしまうので、人一倍動こうというのは意識しています」と明かした。
WTB廣渡将は試合を五分に戻すトライを奪い、見せ場を作った。
しかし、「1点差で負けても100点差で負けても、負けは負け。結果がすべてですから」と言葉は少なかった。
明治大学を卒業し2020年度にチームに加入するも、パンデミックの影響を受けたため、今季が事実上のデビュー年にあたる。
この日はSO渡邉夏燦による空いたスペースへのボール運びがスムーズで、目の前の防御をひきつけて大外へパスができた。
廣渡は、「ボールが回って来て勝負するシーンが(今季リーグ戦の)前半の試合より多かったので、これが早めにできればよかったです」と初のリーグ戦を俯瞰した。
藤山慎也ヘッドコーチは、「横河武蔵野からMOMを選ぶとしたら?」の問いに「みんな頑張っていたけど、キャプテンの金澤ですかね。一番ハードにプレーできていましたね」と答え、「間違いなく良いラグビーはできている。ハードなディフェンスもできているので、自信を持って次のセコム戦には勝って残留を決めたい」と結んだ。
次戦は12月11日に秩父宮ラグビー場でおこなわれる、セコムとの対戦が今季最終戦となる。
※試合の動画は、横河武蔵野アトラスターズの公式YouTubeチャンネルでご確認ください。