自力で入替戦回避へ。SO高桑基生[関大]が最後に全力以上を出す。
17―19。時計の針は40分を過ぎていた。
関大のSO高桑基生は劇的幕切れの中心人物になった。
やらぬ後悔よりもやる後悔。
ゲームキャプテンの高桑は中央40㍍のペナルティゴールを自ら選択した。決まれば逆転勝利で試合を締める。そんなPGを蹴ったのは初めてだった。
「前半にイージーな角度のPGを外していたので、取り返せるチャンスが来たなと。ショットを自分で選択した責任は重かったですが、この緊張感を味わえるのは僕しかいないという楽しさもありました」
後半42分過ぎ。弾道は悪くなかった。ただ少しばかり右にそれる。
ついにスコアは動かなかった。
11月21日、関大は立命館大と戦い、惜敗した。
「悔しいの一言です」
高桑は翌日からキックの練習を始めた。グラウンドの灯りが消えるまで続けた。
「もう次は失敗できませんから」
敗れはしたが、昨季0―38で完敗した相手を追い詰めた。そのリベンジに燃えていたからスコアを縮められた。
「自信がついた試合でした。これまでの戦いで手応えを掴めていたのが良かった」
今季の関大は好調だ。ここ3年間で一度もAリーグで勝てていなかったが、最終節の近大戦を残し、ここまで2勝を挙げている。
第3節で関西学大との伝統の一戦を逆転トライで締めくくり(27―22)、5節では3年前に入替戦で敗れた摂南大に雪辱を果たした(19―17)。敗れた天理戦でも21得点、京産大からも24点奪っている。
高桑は関学戦の勝利が「チーム全体の雰囲気も変わったターニングポイントだった」と話すも、上昇のきっかけはその前にあった。
関大はコロナの影響を色濃く受け、一時は45人が上限の人数制限下での活動を余儀なくされた。その後もチームを完全に2つに分けての練習が夏前まで続いた。
「コミュニケーションも全然取れなくて、決していい状態ではありませんでした」