コラム 2021.11.18
【コラム】戻ってきた景色

【コラム】戻ってきた景色

[ 直江光信 ]

 勝ったほうも、負けたほうも、かけがえのない時間を過ごした一日。熱気と笑顔と歓声にあふれた風景は、「普段接する機会の少ない他地域のチームと試合を通じて交流を深め、ラグビーの普及と発展に寄与する」というこの大会の理念を、あらためて思い起こさせてくれた。今回の経験が、ラグビーをさらに好きになり、この先長く携わっていくきっかけになることを願う。そしてこの日この場所に集ったラグビー仲間と、いつか「あの時試合をしたよな」なんて語り合えたら最高だ。

 高校や大学は昨年から、社会人、日本代表も2021年に入り公式戦が再開されたが、ミニ、ジュニア世代は依然として大規模な大会を開催できない状態が続いている。収益が出るカテゴリーではない上にコロナ対策で余分な経費が必要になることもあって、二の足を踏む部分があるのは理解できる。しかし長い目で見れば、将来を担うこの世代にブランクを作ることは甚大な損失だ。その意味でも今回、いくつもの課題をクリアして500人を超える規模のイベントを実現できた意義は大きいと感じる。

 そして、そんな時だからこそ、日本代表の影響力にも期待したい。2015年、2019年のワールドカップ後の盛り上がりからも明らかなように、国際舞台におけるジャパンの活躍が普及活動に与えるインパクトは絶大だ。アイルランド戦、ポルトガル戦でヘッドラインを飾ることはできなかったが、チャンスはまだ残されている。子どもたちの情熱をつなぎとめるためにも、週末のスコットランド戦は大事な一戦になる。

【筆者プロフィール】直江光信( なおえ・みつのぶ )
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長

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