【コラム】戻ってきた景色
しかしこの秋、長く閉ざされていた再開の扉が、ようやく開いた。10月30日、大阪・Jグリーン堺には、2年ぶりの開催となる「SEINANラグビーマガジンCUP 関西ミニ・ラグビー交流大会」に参加する選手たちの、元気一杯の姿があった。
感染防止のため30に限定した出場枠に対し、申し込みがあったのは55チーム。抽選にもれた多くのチームにお断りせざるをえなかったのは心苦しかったが、これほどたくさんのエントリーがあったことに、胸が熱くなった。同時に、大きな期待を感じて身が引き締まる思いもした。
実施の可否も含めて、関係者で最初の意見交換を行なったのは今年の7月末。その後、8月中旬に開催に向けて準備を進めることが決まったが、当時はちょうど全国の新規感染者数が2万人を超える第5波のまっただ中で、大会までの過程で中止の判断をする可能性を含んだ上での決定だった。しかし幸運にも9月に入る頃から急速に事態が好転したことで、同月末、予定通り参加募集を開始した。
これまでなら考える必要のなかったことを考え、あらゆる面に気を配らなければならなかったのだから、運営役員の方々はさぞ苦労されたことと思う。参加チームにもたくさん面倒をおかけし、さまざまな制約下での行動をお願いしなければならなかった。それでも連絡事項をやりとりするメールや電話からは、今回の開催にかける各人の強い思いが、ひしひしと伝わってきた。
そうして実施にたどり着いた大会だったから、当日は朝からいままでとは違う感慨があった。第一試合が始まる前にこの日を迎えられただけで成功だと思えたし、お世話になってきた方々に久しぶりに会えたこともうれしかった。天候にも恵まれ、グラウンド脇に設置した大会の横断幕さえ、いつもよりピンと張っているように映った。
選手たちが例年にも増していきいきとプレーを楽しんでいるように見えたのも、きっと気のせいではないだろう。緊急事態宣言が発出されていた地域では、対外試合はおろか普段の練習すら思うようにできなかったチームもあると聞いた。遠く離れた場所で活動する同世代の相手との久々の真剣勝負は、長く続いた渇きを満たすような経験になったはずだ。