コラム 2021.11.09

【ラグリパWest】恩師の『楽志』を胸に秘め。大内亮助 [元京産大、ワールドFWバックファイブ]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】恩師の『楽志』を胸に秘め。大内亮助 [元京産大、ワールドFWバックファイブ]
ワールドに勤務しつつ、S&Cやコンディショニングコーチを目指す大内亮助さん。以前、ワールドラグビー部のグラウンドがあった六甲アイランドのその場所はマンションが立ち並び、往時をしのぶことは難しい。今でもウエアーは大切に取り置きしている



 週末はラグビーに忙しい。

 といっても選手ではない。大内亮助はスクールや教室の指導員(コーチ)、そして個人トレーナーをしている。
「大変やけど、おもしろいですよ」
 目は細く、一筆で書ける。常に笑っているイメージ。それは丸刈りのヘアースタイルとともに10代から変わらない。

 京産大やワールドではフォワードのうしろ5人、バックファイブの選手だった。183センチ、96キロの体は筋骨隆々。ギリシャ彫刻の像から「きんにくん」と呼ばれた。

 プレーを完全にやめたのは不惑になった4年前。今は高校生までの育成に携わる。
「この4月から副業がOKになりました」
 働くのはワールドが分社化したadabat(アダバット)。ゴルフウエアーを扱う。仕事ではブランドの方向性などを考える。

「お世話になった会社。転職は考えていません。ラグビーの方はフリーランス。二本柱でやっていけたらいいな、と考えています」
 妻と3人の娘がいる。無茶はできない。

 この7月、先輩から高校生になる息子の個人トレーナーをたのまれた。ウエイトトレーニングなどを教える。先輩は現役時代、同じフォワードとして名の通った選手だった。そのお眼鏡にかなう。技術と人望の高さが垣間見える。資格はトレーナーとしてアメリカのNSCA−CPTを持ち、日本ラグビー協会が定めるB級コーチでもある。

 トレーニングには操体法を採り入れる。
「ざっくり言えば、東洋医学的な運動療法。呼吸やストレッチを入れたような感じで、ヨガにも似ていますね」
 元々の目的は腰痛などの改善。骨盤を調整しながら、体のゆがみやねじれを直す。その資格も持ち、ラグビーをひも付ける。

「すべては腰なんですよね。グラウンドでは200キロを挙げる力はいらない。自分の体重、自重をどう使いこなせるか。身のこなしや体重移動が重要だと思っています」

 先輩の息子がスクラムを組んで、腰が痛い、と言えば、答える。
「背中を伸ばす。丸くなっている」
 ベンチプレスから腕立て伏せにすぐに移行させる。重量と自重の連動をはかる。

 その方法論を導き出したキャリアの本格的な始まりは京産大。スクラムのみで3時間の猛練習の中、ラグビーの面白さを知る。

「自分が突っ込んで行っても、オーバーしてくれる。タッチフットは大畑さんや山岡さんらがいて、ボールがポンポン回りました」

 高校は高田。奈良の無名の県立校。オール奈良に選ばれたが、軸は自分だけ。縦に出たら終わり。大学は後ろが続いてくれる。そして、2つ上には大畑大介や山岡宏哉がいた。ウイングの大畑は神戸製鋼に進み、日本代表キャップ58を得る。坂田好弘に続き、アジア人2人目のラグビー殿堂入りを果たした。山岡は俊敏なスタンドオフだった。

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