国内 2021.10.21

今季2勝目も「改善」を止めない。法大・石岡玲英は2年でリーダーの風格。

[ 向 風見也 ]
今季2勝目も「改善」を止めない。法大・石岡玲英は2年でリーダーの風格。
思い切りのいい仕掛けで大きなゲインをもたらす。法大・石岡怜英(撮影・高塩 隆)


 すでに船頭の風情だった。

 味方がミスや反則で流れを止めるたび、法大ラグビー部2年の石岡玲英は最後尾から声を出す。境界線の前でプレーするオフサイドと判定された時は、「がまんしよ(う)!」といった調子である。

 10月16日、関東大学リーグ戦1部の中大戦にFBで先発していた。

 さかのぼって9日には、関東学院大に17-20で敗戦。神奈川の相手校グラウンドで逆転負けしたその日の悔恨が、「がまんしよ(う)!」を促していた。

 後の間接的な取材で、このように述べる。

「僕は、前回の関東学院大戦で負けたことが悔しくて…。試合中にどれだけ(課題などを)修正できるかが試合に勝つためのポイントだと思いました。何かミスが起こった時、皆が焦り始めたところを落ち着かせて、方向性を統一する。そのために、皆の前でしゃべろうと(戦前から)決めていました」

 学年リーダーという役職を担う。同級生でLOの竹部力から、こう尊敬される。

「ラグビーに対する意識が違う。本当に、ラグビー、大好きなんだなぁとわかります。自分に厳しく、人にも注意できる。1年生のうちから4年生に『ここはこうした方が…』と戦術的な意見を言っていました。発言力がすごい」

 奈良県出身。大和郡山市少年少女ラグビースクールで楕円球と出会った。郡山中を経て入った御所実高では、3年時に全国準優勝を果たす。高校日本代表にも選ばれた。

 法大ではルーキーイヤーからWTBでレギュラーとなり、今季は正FBに定着している。信頼を得る理由は、言葉だけではなかった。身長177センチ、体重80キロのランナーは、今度の中大戦でもプレーで魅した。

 前半6分、先制トライを挙げた。

 ハーフ線付近右での相手ボールラインアウトが法大側に渡り、左方向への連続攻撃が始まる。左中間にいた石岡は、いったん相手と間合いを取りつつ、飛び出す防御の背後へ走り込む。加速して球をもらう。カバー役をパスダミーとフットワークでいなし、そのままゴールエリアへ躍り出た。

 直後のコンバージョンも自ら決めたこの場面を、こう振り返る。

「自分たちで話し合っていた通り『ためる(間合いを取る)』を意識。まっすぐ走って、ラストパスを放るつもりでいたら(目の前に)スペースができたので、そこを走れた。チーム全員で取れた、いいトライだと思います」

 7-3とわずかにリードして迎えた同13分頃には、危機管理能力を発揮する。

 この時、法大は敵陣中盤で自軍ボールスクラムから展開を図ったが、パスを乱してしまう。中大側がそのボールをキックした瞬間、石岡が一気に駆け戻る。まっすぐ走る相手より早く弾道へ追いつき、自陣22メートル線付近左隅へ滑り込む。チャンスがピンチに変わるのを防いだ。

 以後も冷静なフィールディングとキックを披露し、首尾よく敵陣に入れば計4本のペナルティゴールを決める。40-13のスコアで今季2勝目を挙げ、関東ラグビー協会選定のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。

「自分たちのチェイスに上がる人(キックを追う選手)たちがしっかりディフェンスしてくれた。(自身が)ミスキックをしても優位になる状況に持って行ってくれた」

 トライシーンと同様に、殊勝な言い回しで総括する。次戦への意気込みを問われた際も、地に足をつけていた。

「自分たちが選手権に出るには、まだまだ強い相手を倒していかないといけない。きょうの勝利におごるんじゃなく、反省点を見つけ、改善していきながら、いい準備をして臨みたいです」

 30日、埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で大東大とぶつかる。8チームいるリーグ戦で3位以内に入れば、クラブにとって4季ぶりの大学選手権出場が叶えられる。

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