日本代表 2021.10.02
「Improvementが一番の喜び」。車いすラグビー ケビン・オアーHCの横顔

「Improvementが一番の喜び」。車いすラグビー ケビン・オアーHCの横顔

[ 張 理恵 ]



 楽観的で、ユーモアと人間味にあふれ、笑顔で場を和ませる。一方では「頭を使え!」と厳しい口調で叱る。この全部が、ケビン流だ。
「選手がベストであるためにいろいろなツールを使います。笑いであったり、大きな声で叫ぶことだったり。オーケストラでいうと指揮者のように、自分が持っているツールをすべて使うというのが私のやり方です」

 ラグビーを離れれば(失礼を承知で言うと)「おちゃめ」という形容詞がしっくりくる愛されキャラ。
 生卵はちょっと苦手だがすき焼きが大好き、しゃぶしゃぶ、焼肉も大好物。
 趣味はバス釣り。合宿で日本滞在時には釣具屋に行くのが楽しみで、JAPANのロゴが入ったリュックから自慢げに日本の釣り雑誌を取り出して見せてくれたほどだ。
 日本の文化を愛し、日本語のボキャブラリーも着々と増えている。

 東京パラリンピック開幕の1週間前、ケビンHCは日本代表と歩んだ4年半をこのように振り返った。
「日本チームとはとても楽しい(fun and interesting)旅を続けてきています。リオパラリンピックで日本は金メダルを獲る能力があるチームだと思っていました。コーチに就任して、その能力にさらに磨きをかけてきました」

「これまでの道のりを振り返って満足しているのは、自分もチームの一部になれたことです。私のチーム、彼らのチームではなく、『私たちのチーム』になれたことがすごく幸せです。自分もチームを信じ、チームもコーチとしての能力を信じてくれた。お互いが信じ合い、多くの成功を成し遂げることができました」

 東京2020大会で日本代表は2大会連続の銅メダルを獲得した。
 最後の戦いを終え、選手たちはケビンHCへの思いを口にした。
「ケビンに金メダルをかけてあげられなくて申し訳ない」
 ディフェンスの要・今井友明は涙を浮かべて、感謝の言葉とともにそう語った。

 そして、パラリンピック5大会連続出場のチーム最年長・島川慎一は、銅メダルの悔しさを口にしながらも清々しい表情で語った。

「自分の強みを引き出してくれて、彼が来てから僕も成長できた。ケビンのプレッシャーはすごかったと思う。コロナ禍でアメリカに家族を残し(来日時には)隔離期間がある中でも一切ストレスを見せずにやってくれた。感謝しかない。20年以上やっていてまだ学びがあるこの競技はすごい。『君はもう使えないから』とケビンに落とされるまで続けていくつもりだ。今、成長期なので」

 パリ大会までの続投が決まっている。
 東京パラリンピックの3週間後には育成合宿をスタートさせた。
 ケビン・オアーHCは言う。
「車いすラグビーをやってみたいと思ったら、いつでも私に連絡をください!」

 原石を探し、磨いてゆく地道な活動は続く。
 2024年のパラリンピックに向け、車いすラグビー日本代表とケビンHCの新たな旅が始まった。

日本代表強化合宿にて。2019年撮影。(撮影/張 理恵)

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