国内 2021.09.28

東海大・丸山凜太朗、指揮官の苦言と控え降格経て「リーダー」を目指す。

[ 向 風見也 ]
東海大・丸山凜太朗、指揮官の苦言と控え降格経て「リーダー」を目指す。
東海大の丸山凜太朗。相棒のSO武藤ゆらぎも、そのスキル、視野の深さを絶賛する(撮影:高塩 隆)


 初戦勝利の立役者の1人。東海大4年の丸山凜太朗が、マッチコミッショナー選定のプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。

 もっとも、その功績には酔わなかった。

「この試合では自分たちがやるラグビーにフォーカスしてきました。達成度合いは、まだまだ。よかったところもありますが、まだまだミスも多かったですし。次の試合へミスを少なくしていかないと」

 9月26日、神奈川・小田原市城山陸上競技場。関東大学リーグ戦1部の初戦で、前年度8チーム中7位の関東学院大を57-5で下した。12番をつけた丸山は、持てる技能でトライラッシュを演出した。

 7-0のスコアで迎えた前半8分。キックの捕球から始まった攻めのさなか、自陣10メートルエリア右でパスをもらう。目の前の穴を駆け抜け、チーム2本目のトライを決めた。

 セットプレーからも魅せた。続く18分、ハーフ線付近左のラインアウトから球を得るや、パスダミーで防御を揺さぶり正面突破。身長173センチ、体重82キロと決して大柄ではないが、局面を打開する判断のスピードには定評がある。

「ラインアウトからのデリバリー(FWとSHのボールの供給)が非常によく、ボールをもらう時に自由に動くスペースがあった」

 丸山のランで勢いに乗った東海大は左、右と揺さぶり、最後は丸山が無人のスペースを駆け抜けた。自らが蹴っていたゴールキックも決め、19-0と点差をさらに広げた。

 この午後の東海大は、勝ち得たチャンスを首尾よく点につなげた格好。殊勲の上級生はこう述べるのだった。

「日頃の練習からミスに厳しくやってきた成果かなと」

 東福岡高を卒業後、間もなく正司令塔となった。20歳以下日本代表でも10番をつけて持ち前のスキルを発揮したが、昨季は足踏みした。

 新手のウイルス禍でクラブが解散していた春のある日、オンラインミーティングに参加したことがあった。そこではチームを率いる木村季由監督と、液晶画面越しに1対1となった。

 指揮官の回想によると、ここではかように話した。

「お前は、自分が周りからどう見られているか考えたことあるか?」

「1年生から試合に出ていて、一言、一言に影響力はあると思います」

「確かにそうかもしれない。ただ、その影響はいい影響なのか? 確かに能力はある。言葉も強い。それでも、チームとしての方向性をないがしろにしていてはいくら存在感があってもリスペクトはされないよ」

 それまでの約2年間、丸山はチーム戦術や個々の動きに関して忌憚(きたん)なく意見を述べていた。その競技への情熱と執念は、あらゆる意味での刺激物となりかねない。そう直感した木村監督は、図らずもやってきた中断期間に軌道修正を図ったのだ。

 結局、通常より約1か月遅れて始まったシーズンで、丸山は控えに回ることが増えた。チームもリーグ戦こそ3連覇を達成も、一昨季4強入りできた大学選手権を準々決勝敗退で終えた。

 あの日のオンラインミーティングについて、4年生になった本人は「何か、言われた気がしますね」と後述。興味深いのは、その後の問答でこう続けたことだ。

「去年は、精神的にも僕がぶれていたんで」

 昨季終了後には、「チームのために何かをしようというアクションは起こしていなかった。それが理由で試合でもリザーブ…」と反省。「心を入れ替えてチームのためにやろう」と己に言い聞かせた。少なくとも、その意志を言葉にした。

 新シーズンに向け、首脳陣からは「今年はリーダーじゃないお前が、リーダーをサポートする立場でいてくれ」と助言された。自分の目指すあり方もそれと同じだったから、やるべきことをクリアにできた。

「全員がキャプテンシーを持って、リーダーが何人もいるようなチームになれば、強いチームになるかなと。もし僕が主将だったとしてもその方が助かる」

 平時のミーティングを大切にし、東芝の吉田良平氏ら外部コーチとプレースタイルについて対話する。ただ言いたいことを伝えるのではなく、言いたいことをチームの聞くべきことに昇華しようとするのが肝か。

「いまは、選手主体で話を進めています」

 振り返れば、昨季は現キヤノンの吉田大亮前主将が強烈なリーダーシップで先頭を走っていたように感じた。それに対して今年は、フィールド上での出来事について関わる全ての人が理解、納得できるよう努めたい。丸山はそう言いたげであった。

「去年のシーズンは僕自身も、チーム状況もよくなかった。それをいい経験と捉える」

 思えば高校時代は、ラグビーを続けることはおろか大学進学にも興味が薄かった。いざ神奈川のキャンパスに通ってみれば、「いろんな人とのコミュニケーション能力とかで、成長できたかな、多少は。そう思っています」と笑う。木村監督からも「人間的成長」を認められ、選手としては来年のジャパンラグビーリーグワン参戦を決めた。

 残された学生生活。目指すは初の大学日本一達成だ。自分を含めた全部員がチームと向き合い、チームをよくできる人となれるよう、力を尽くす。

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