高卒プロが即NDS入り。ワーナー・ディアンズの積極性。「アグレッシブな感じで」
改めて、話題の人となった。
この春、高校卒業と同時に東芝ブレイブルーパス(現 東芝ブレイブルーパス東京)入りしたニュージーランド出身のワーナー・ディアンズは、9月21日、ナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)へ名を連ねた。同世代の精鋭たちが進む大学を経ずにプロの道へ足を踏み入れた19歳が、次世代の日本代表候補と目される5名のうち1人となったのだ。
今秋のツアーに向けた日本代表候補39名とともに発表された。藤井雄一郎ナショナルチームディレクター(NTD)にこう言及された。
「あのサイズは、代表のなかにもいない」
藤井NTDの言葉通り、現日本代表候補の最長身選手は197センチのリアキ・モリ。身長202センチ、体重122キロのディアンズは今回名前の挙がった計44人で唯一の2メートル戦士だ。LOのポジションを務め、将来的には空中戦の軸として期待される。
万能性も育んできた。ニュージーランド出身のディアンズは、NECグリーンロケッツ(現 NECグリーンロケッツ東葛)でコーチだったグラントさんを父に持つ。中学2年から千葉・あびこラグビースクールで楕円球を追ってきたが、その頃はいま以上にすらりとした体格。球を回すCTBに入ることもあった。
進学先となった千葉・流通経済大学付属柏高校の相亮太監督は、自軍でのディアンズの進化からこう展望する。
「もともとは185~6センチで入ってきて15センチも伸びて、体重も増えてきた。CTBからスタートして徐々にFWのプレーを身に付けていった。2メートルの選手でありながら、日本式の低いプレーができるようになってきているんじゃないかなと。幅広いスキルを持った選手になる可能性は十分ある。メイド・イン・ニュージーランドのパソコンに日本のチップを搭載したイメージです」
なにより楽しみなのは、この青年の積極性だ。東芝ブレイブルーパス東京の採用担当で元日本代表の望月雄太氏は、チームに合流したディアンズを見て「欲がある」と感じた。
「高校を卒業したばかりだからと言って『僕はまだまだなんで…』と一歩引くスタンスではなく、『チャンスがあれば試合に出たい』の欲がこの時点で強い。日本語はめちゃくちゃうまくて、コミュニケーション能力は非常に高い。最初は尻込みしていた部分もあると思うけど、なじんできたら『中に入ると、楽しいですね』と」
望月氏が話したのは、チームがトップリーグを戦っていた今年3月ごろ。折しも本人は、合流して間もない時期にあった他部とのトレーニングマッチへの出場を熱望していた。ハングリーだった。
カテゴリーを問わず有望な逸材を探す望月氏は、採用の過程についても述べる。
「もともと春の高校選抜大会、花園(冬の全国高校大会)は見るようにしていて、彼の存在は高校1年生の頃から知っていました。ただ話もしたことはなかったし、きっと普通に進学をするのだろう思っていました。ところが本人のほうから『大学ではなく、プロフェッショナルの世界で挑戦したい』と門を叩いてくれた。うちのヘッドコーチのトッド・ブラックアダーからも『彼なら2年もあれば戦力として活躍できる』という判断をしてもらえた。それをもとに動けたところもあります」
ディアンズ自身は、いまの環境に「(東芝ブレイブルーパス東京の)皆とラグビーをやれることが、全部、楽しいです。一回一回のスキル練習もすごく高いレベルでやっている」と感謝する。
日々のトレーニングで印象的だったのは、タックルを試みて押し返されたワンシーンだという。
「初めて(実戦練習で)タックル行った時でした。ちょっと、やられたというか、後ろに下がっていったんですけど、コンタクトが好きなんで楽しかったです」
失敗を恐れない。同僚のLOでイングランド、フランスで契約実績のあるマイルズ・エドワーズとのマッチアップについて、高揚感たっぷりに語る。
「エドワーズ。ボールキャリー(突進)が強いです。一回、タックル行きました。その瞬間は(あまりの強さに)『やばい!!』と思ったんですけど、(結果的に)いい感じでタックルに入れていたので、よかったです」
いまは「コンタクトの部分が足りていない。チームのシステムにも慣れていない」と自分の課題を認めながらも、アピールポイントとして「フィットネスは自信を持っています」。高校時代はニュージーランド代表入りを目指したこともあったが、いま見据えるのは日本代表である。
「まず、東芝で試合に出る。プレーのなかでは、アグレッシブな感じでいきたい。まず試合に出てから…だと思います」
ロールモデルは、同じチームの先輩だ。ワールドカップで2大会続けて日本代表の主将となったリーチ マイケルは、ニュージーランドから来日して札幌山の手高校に留学した過去を持つ。ディアンズは、自身と似たキャリアを経て列島の象徴となったリーチに憧れる。
「リーチさんはすごいリーダーシップを持っている。コンタクトの時は皆を盛り上げ、練習でミスがあった時もしっかりと(前向きな)声をかける。リーチさんと一緒にプレーできることは、自分の成長にとっていいことです。いま、リーチさんはターゲットの人です。練習でも試合でも毎回、100パーセントでやる、超えたい人です。自分もポジション的にハードワークが必要だと思っています」
ディアンズがNDSの一員として挑む宮崎合宿は、9月29日に始まる。ここにも帯同するリーチが初代表入りを果たしたのは、いまのディアンズとそう変わらない20歳の頃だ。