国内 2021.09.03

1年で明大の主力FL。タックル&仕事量際立つ福田大晟、強さの肝。

[ 向 風見也 ]
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1年で明大の主力FL。タックル&仕事量際立つ福田大晟、強さの肝。
明大のルーキー、福田大晟。写真は今夏、早大との練習試合から(撮影:松本かおり)


 ここまで強さが際立つ。

 ついこの間まで高校生だったが、留学生を含めた大学レベルの猛者とのぶつかり合いでも引かない。勝負所で強烈なタックルを打ち込めば、多くを語らぬ人がもっとも多く用いるフレーズを残す。

「気合で、行っています」

 全国から俊英が揃う明大ラグビー部にあって、福田大晟は1年目の春からレギュラーに抜擢された。2021年度の春シーズン、部内選定の新人王となった。

 遠目からやや小さな選手に映ったとしても、実際は大臀筋周りの安定感、僧帽筋のふくらみが明らかだ。芝に立てばビー玉の瞳を動かさず、淡々と防御ラインの穴を埋める。渋く放たれる光の鋭さは、「身長173センチ、体重95キロ」「50メートル走6.6秒」という公式記録では表現しきれまい。

 小2で愛知の豊田ラグビースクールに通い始めた。もともとランやパスの多いBK陣に属したが、中学からは身体接触で請われるFW陣へ移った。

「ぶつかる部分が好きだったので」

 中部大春日丘高に進めば、FW最後列のNO8として1年時から試合に出続けた。2年時は17歳以下日本代表となり、最終学年時は主将としてチーム史上初の全国高校大会8強入りを果たした。その後は高校日本代表が編まれなかった代わりにリストアップされた、大会優秀選手にも名を連ねた。

 中部大春日丘高のNO8といえば、日本代表として活躍する姫野和樹が印象的だ。攻撃的な姫野に対し、福田は守りで目立つ。自身の長所を語る折は、公称で「身長182センチ、体重101キロ」と国際舞台では小柄なオーストラリア代表FLを例に挙げる。

「僕の強みはディフェンス。理想像はマイケル・フーパー選手です。小柄でもタックル、ジャッカルでチームに貢献できたらなと思っています」

 8月22日、長野・菅平で天理大と練習試合をおこなう。春先から主力組に絡んだ福田は、この日も背番号7のオープンサイドFLで先発した。後半47分頃にはチーム3本目のトライを決めただけでなく、宣言通り「ディフェンス」で奮闘した。28-10で勝った。

 ハイライトは前半19分だ。自陣22メートル線付近左の相手ボールラインアウトからラックができると、福田は相手攻撃陣と正対し、その動きに倣うよう左から右へ移動する。接点からパスが出るや、視線の正面に捉えた受け手にジャストミート。すぐに起き上がる。

 向こうが右側へスピーディーに攻めようとするなか、ちょうど右中間にできた接点のさらに右へ大回りする。

 相手がその右方向へフェーズを重ねると、福田は密集戦へ身体を入れる。ただし攻守逆転が難しいと見るや、すぐにその群れから抜け出す。防御網へ戻る。

 以後、天理大は明大側から見て中央、右とパスをつなぐ。ここで福田は、右側で孤立した走者の進路を先回りする。

 腰を落とす。倒れ込んだその走者の上体を、自分の手元へ引き込む。向こうの持つ楕円の宝へ絡む。笛の音を聞く。その一手で、天理大に寝たまま球を手放さないノット・リリース・ザ・ボールの反則をさせたのだった。

 要所でのタックル、ジャッカルに加え、このふたつの仕事をつなぐオフ・ザ・ボールの動きも見事。たくさんプレーをするためにたくさん動いたルーキーは、淡々と振り返る。

「(相手の動きの)予測は、します。明大の土台はB・I・G(バック・イン・ザ・ゲーム=倒れている時間を減らすためのチーム内用語)なので、そこも意識してやっています」

 この一連の流れは、指揮官の言葉とも重なる。

 今年6月就任の神鳥裕之監督は、「僕よりも(選手を)よく知っているコーチたちの評価を信頼している」。試合のメンバーを選ぶにあたり、従前からいるコーチ陣の意見を参考にする。ただ、8月上旬に実施した福島合宿のひとこまに触れ、自らが福田大晟に惹かれるわけも語ったのだ。

「福島合宿ではかなり走ったんです。1週間の走行距離が30~40キロというきつい状況下でも、特に大晟は顔色ひとつ変えずにパフォーマンスを発揮していた。きつい時に表情が変わらないことは、何気にすごいことです」

 ビッグプレーをする瞬間も、そうでない瞬間も、ずっと力を発揮し続けられる。それが福田大晟の強さであろう。

 ずっと全力を出せる福田は、スマートでもある。入寮以来、スタメン定着のための課題を簡潔に整理。努力の方向性を定めた。

「大学に上がると(対戦校に)外国人選手もいっぱいいるので、負けないように身体をでかくすること。あとは明大の(攻防の)システムをいち早く理解する。高校の時から、システムを理解できていないと使われないというか、(出た選手が無理解のままプレーすると組織が)回らない…ということがあったので」

 ちなみに大学に入ってから、ベンチプレスとスクワットで挙げられる最大重量をそれぞれ「120キロから135キロ」「170キロから195キロ」に増やしている。己に課したミッションを、着実にクリアしてきた。

「ディフェンスでは強みを活かせている。これからはアタックでも強みを出せるよう練習していきたいです」

 加盟先の関東大学対抗戦Aは9月12日に開幕。明大は青学大との初戦をおこない(東京・明大八幡山グラウンド)、12月5日の早大戦(東京・秩父宮ラグビー場)までの計7戦で3連覇を目指す。以後は昨季4強に終わった大学選手権で、3季ぶり14度目の日本一を狙う。

 神鳥監督は「厳しい最終局面で上級生の存在感が必要になる時は来るかもしれません。ただしその前段階では、いい選手には積極的に上(のチーム)で経験を積ませる。スタッフ間には、口に出すまでもなくそういう雰囲気があります」とも補足する。本人はこうだ。

「春から出させてもらったけど秋は出られないというのは自分のなかで悔しい。大事なシーズンに7番を着続けることが、自分の達成しなければならないことです」

 本当の強さが問われるのは、ここからだ。

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