【ラグリパWest】新幹線通学は5年目に。武村晋 [灘高校/兵庫県]
その生活は母の献身で成り立っている。武村より早く起き、パン、目玉焼き、サラダなどきちっとした朝食と昼食を整える。駅への送迎も欠かさない。
「母には頭が上がりません。弁当まで作ってもらえて、とても感謝しています」
父の信之は現在、海外赴任中だ。
武村がラグビーを始めたのは中3の秋。それまでは野球をしていた。
「夏でひと区切りがついたので、次はみんなが活躍できるスポーツをやりたくなりました。ラグビーは15人が頑張らないと勝てません」
野球は投手にかかる比重が高い。
体が大きいことも勘案した。今は181センチ、87キロ。センターをしている。
「ライン全体で相手を止めたり、ボールを運んでいくところがおもしろいですね」
灘の練習は基本的に中高合同で火曜と日曜を除き毎日ある。火曜は唯一の7時間授業のため、オフになっている。
灘ラグビーの歴史は古い。創部年は1948年(昭和23)。学制改革で旧制中学が高校になった年に定められている。開校の20年後にあたる。県内では神戸、兵庫に次ぎ、3番目の長さ。全国大会出場こそないが、近畿大会出場は4回。最後は1974年。前任監督の山口安典の時代である。
この学校の保健・体育教員は5人。専門競技に関係なく、みな日体大出身だ。山口も武藤もそうである。武藤は43歳。現役時代には群青を着たフランカーとして、秩父宮で紫紺や赤黒と戦っている。長男の航生(こうしょう)は関西学院の主将。フルバックとして高校日本代表候補に挙がる。
灘は2016年度の96回大会の県予選を最後に合同チームになった。中田は単独チームで戦った最後の代になる。2勝したあと、3回戦で2位になる関西学院に7−70で敗れた。唯一のトライを記録した中田は、国体の県代表「オール兵庫」にも選ばれている。
現在、灘は六甲学院と合同チームを組む。部員数は9。武村の2年生が7、1年生は2だ。基本的に3年生は県民大会(春季大会)あとの6月にある甲南との定期戦で引退する。秋の全国大会予選には出場しない。
その慣習を引けば、武村ら2年生にとっては来月から始まる101回目の県予選が、花園を目指す最後の戦いになる。
「合同のハンディを乗り越えて、みんなと力を合わせてひとつひとつ勝っていきたいです」
長距離通学の中で、ラグビーと出会い、練習を続けてきた成果を出す機会が迫る。
楕円球との縁は将来も切らないつもりでいる。
「大学に入ってスポーツをやるなら、ラグビーを続けるつもりです」
その気持ちに、よい思い出を重ねていきたい。