4年に一度の国際ラグビー界のビッグイベントを総チェック! B&I・ライオンズ南アフリカ遠征 前半戦レビュー、後半戦プレビュー【B&Iライオンズ南アフリカツアー J SPORTSで全試合配信】
イングランド、スコットランド、ウエールズ 、アイルランドの選抜メンバーによって結成されるドリームチームが、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアの南半球の強豪3か国へ4年おきに遠征する国際ラグビー界の一大イベント、『ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(B&Iライオンズ)』ツアー。今回の遠征先は、2019年のラグビーワールドカップ日本大会で3回目の優勝を果たした南アフリカだ。ツアーは7月3日のシグマ・ライオンズ戦を皮切りに5週間で8試合が組まれており、7月24日から3週連続で行われる世界王者、スプリングボクスとの3テストマッチが、B&Iライオンズの最大のターゲットとなる。ここでは7月10日までに行われた3試合を振り返りながら、後半戦の見どころを展望してみたい。
目を引く防御面の充実とBKの決定力。ボクス戦ではセットプレーが焦点に
南アフリカでは現在、新型コロナウイルスの第3波が猛威を振るっており、綱渡りのやりくりが続く今回のB&Iライオンズだが、チームの仕上がりという点では着実にステップを重ねている。とりわけ目を引くのは、ディフェンス面の充実だ。ジャパン戦からシグマ・ライオンズ戦、シャークス戦と、ゲームを重ねるごとに連携が強化され、安定感が向上。シャークスとの第2戦はルーズなプレーも散見され5トライを許したが、大勝した相手と短いスパンでの再戦で気の緩みが出るのも仕方のない部分があり、心配する必要はないだろう。
アタックではバックスリーの決定力が際立っている。中でも好調ぶりをアピールしているのがアダムス、ファンデルメルヴァのWTB2人で、これまでの4試合でそれぞれ8本、5本とトライを量産しているのは心強い。アンソニー・ワトソン(イングランド)もシャークスとの第2戦で2トライを挙げて実力を示しており、テストメンバーをかけたチーム内競争は激化している。
スプリングボクスとのテストマッチで最大の焦点と見られているのは、攻守の起点であるスクラムとラインアウトだ。2019年のラグビーワールドカップでは、この2つのセットプレーを制圧したことが南アフリカの優勝の原動力になった。今回のB&Iライオンズにはその時に苦渋をなめたイングランド(決勝で12-32の敗戦)、ウエールズ(準決勝で16-19の敗戦)のメンバーが多数含まれており、相当な決意を持ってこのツアーに臨んでいるはず。ここまでの戦いぶりを見ても随所に研究と対策の成果が見てとれるだけに、どんな局地戦が繰り広げられるのか、興味がふくらむ。
2013年のオーストラリアツアー、2017年のニュージーランドツアーに続きB&I ライオンズで3回目の指揮を執るウォーレン・ガットランド監督は、遠征の前半戦ですべての選手に先発機会を与えることを明言し、実際にさまざまな布陣でテストマッチに向けたメンバーの見極めを進めてきた。リーダーについても、ジャパン戦で負傷し離脱したLOアラン=ウィン・ジョーンズ主将(ウエールズ)に代わってSHコナー・マレー(アイルランド)をツアーキャプテンに指名したほか、FBスチュアート・ホッグ(スコットランド)、LOイアン・ヘンダーソン(アイルランド)、HOジェイミー・ジョージ(イングランド)を順にゲームキャプテンとして出場させるなど、入念に備えを施している。ここはこれまでのB&I ライオンズでの経験がもっとも生きる分野であり、チームの仕上がりのよさの要因ともいえるだろう。
ひとつ気がかりなのは、選手のコンディションだ。スクランブル起用を余儀なくされたことで、試合間隔を考慮しながら37人のメンバーをローテーションさせるのが難しくなり、一部の選手に連戦の負担が集中しつつあるのは痛い誤算だろう。7月11日にはアキレス腱を痛めたSOフィン・ラッセル(スコットランド)に離脱の可能性が持ち上がり、そのカバーとしてプレミアシップでハリクインズを優勝に導いた22歳のSOマーカス・スミス(イングランド)が追加招集された。今後は7月14日の南アフリカA戦、17日のストーマーズ戦を経て24日の第1テストを迎えるが、タイトな日程、限られた機会の中でいかにチーム状態をピークに引き上げていくか、首脳陣の手腕が試されることになる。