海外 2021.06.25

フランス・トップ14は今夜決勝! 勢いあるラ・ロシェル、トゥールーズは2冠目指す

[ 福本美由紀 ]
フランス・トップ14は今夜決勝! 勢いあるラ・ロシェル、トゥールーズは2冠目指す
トップ14決勝進出をファンと一緒に喜ぶラ・ロシェルの選手たち(Photo: Getty Images)


 フランス・トップ14の決勝は6月25日(日本時間26日)、トゥールーズとラ・ロシェルの間で争われる。国内リーグの決勝が欧州チャンピオンズカップ決勝と同じ顔合わせになるのは初めてだ。ラ・ロシェルが勝てば初優勝、トゥールーズが優勝すればチャンピオンズカップとのダブル制覇になる。モチベーションはどちらも十分。ラ・ロシェルのパワーと勢いが勝つか、トゥールーズの経験が勝るか。ブックメーカーの予想では、今回はラ・ロシェルが若干優勢になっている。

 準決勝第1試合は6月18日におこなわれ、まずラ・ロシェルがラシン92を19-6で下した。リーグ戦2位通過で直接準決勝進出、前週は1週間オフをとりリフレッシュしたラ・ロシェルに対して、前週スタッド・フランセに圧勝したラシン92。試合前は接戦が予想されていたが、序盤からラ・ロシェルのFWがパワーと激しさで相手の若いFWを完全に支配し、スター揃いのラシン92のBKラインにボールを与えなかった。

 試合終了前からテレビカメラが捉えていたのが、スタンドで観戦していたラ・ロシェルのヴァンサン・メルラン会長だ。現在のトップ14の会長のなかではいちばん古く、30年間クラブのために尽力してきた。感情を抑えようと堪えていたが、試合終了のホイッスルと同時に涙が溢れた。「ファイナルに2回も…」と感激しているメルラン会長を「まだ何もできていない。喜ぶのは来週」とロナン・オガーラHCはたしなめたという。

 翌日おこなわれたもうひとつの準決勝は、ボルドーが果敢に攻め、終始プレッシャーをかけ続け、トゥールーズを追い詰めた。
 18-24と6点を追うボルドーは後半36分、トゥールーズ陣内でペナルティを得た。タッチに出してラインアウトからトライを狙いに来るだろうと思われたが、ショットを選択して、21-24。その後、トゥールーズが守りきって勝利した。

 試合から2日後の会見でこの選択について、ボルドーのクリストフ・ユリオスHCは、「僕の判断ミス。ラインアウトからトライを狙うべきだった。トゥールーズはかなり疲れていた」と述べている。

 実際、トゥールーズには疲労が蓄積しているようだ。昨年5月にトレーニングが始まってから58週が過ぎた。その間、戦った公式戦は34試合。負傷者も多くなる。この試合もバックローのジェローム・カイノがLOに入っていた。また右PRのチャーリー・ファウムイナは、同じPRのドリアン・アルデゲリが負傷してから、毎試合60〜70分プレーしている。さらに準決勝ではSOロマン・ンタマックが相手CTBのタックルにより頭部に衝撃を受け、担架で運び出された(タックルをしたUJ・セウテニは危険なタックルで退場処分)。

 決勝ではトマ・ラモスがSOに入り、FBは本職のマキシム・メダールではなく、チェズリン・コルビが務める。メダールはリザーブに名を連ねたが、チャンピオンズカップ決勝以降、試合に出場しておらず、まだ完全な状態ではないのだろう。

 トゥールーズは試合前日の会見でも、「58週目で、(試合と試合の間が)1日少ないのは大きい」とユーゴ・モラHCは漏らし、SHアントワーヌ・デュポンも「個人的にもプレー時間が今まででいちばん長かった。選べるなら、(ラ・ロシェルと同じように)金曜日に準決勝をしたかった」と冗談を交えながらも、疲労に触れているのが気になる。

2冠獲得で現役生活を締めくくりたいトゥールーズのジェローム・カイノ(Photo: Getty Images)

 決勝の見どころは2011年と2015年のワールドカップで優勝した2人のオールブラックス(ニュージーランド代表)の対決。トゥールーズのカイノと、ラ・ロシェルのヴィクター・ヴィトだ。ポジションはどちらもFW3列で、オールブラックス時代はカイノがスターターになることが多かった。「オールブラックスでは激しさを求められたが、それは僕のスタイルではなかった。ボールをつなぐプレーの方が僕には合っていた」とヴィトは振り返っている。カイノはこの試合を最後に現役引退を表明しており、来季からはトゥールーズのエスポワール(アカデミー)のコーチになる。ヴィトは今季でラ・ロシェルを退団、ニュージーランドに帰国する。この2人の姿を目に焼き付けたい。

 もうひとつ楽しみなのは、タウェラ・カーバーローとデュポンのSH対決だ。ボールキャリアーの内側にサポートについてパスをもらってトライをとるプレースタイルは、今やデュポンの十八番になっているが、このインスピレーションを与えたのが、2015年ワールドカップでのカーバーロー(ニュージーランド代表)のプレーだ。「フランスとの準々決勝で、途中出場したカーバーローが味方の内側にサポートについて2トライしたのを今も覚えている」と現フランス代表のデュポンは話している。こちらは、ちょっとした師弟対決だ。

 決勝は、例年通りパリのスタッド・ド・フランスでおこなわれ、14,000人の観客動員が認められた。1万人を超えるのは今季初めて。欧州チャンピオンズカップの決勝はロンドンのトゥイッケナムでおこなわれたため、チームメイトや家族が行くことはできなかった。今回は地元のサポーターにも家族にも、観に来てもらえる。選手たちのモチベーションがさらに上がるだろう。
 どちらも今季のチャンピオンになるにふさわしいシーズンだった。素晴らしいファイナルになることが予想される。ラグビーの神様もどちらにつくか決めかねているに違いない。

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