コラム 2021.06.02

【ラグリパWest】二足の草鞋。陣内健[じんない接骨院・鍼灸院]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】二足の草鞋。陣内健[じんない接骨院・鍼灸院]
自身が院長をつとめる「じんない接骨院・鍼灸院」で手技を披露する陣内健さん。市立尼崎高のコーチ兼トレーナーでもある。後方には、神戸製鋼のサイン入りジャージーが飾られている



 院内は感謝のこもった色とりどりのスポーツグッズや色紙に囲まれている。

 ラグビー、野球、大相撲、バレー…。ジャージーは深紅の神戸製鋼。全選手のサイン入り。黒いユニフォームはメッツ時代の新庄剛志。阪神左腕の岩田稔のものがある。

 陣内健(じんない・けんじ)は日焼けした顔をほころばせる。
「ほとんどの患者さんはスポーツ外傷ですね。お年寄りは数パーセントです」
 院長である「じんない接骨院・鍼灸院」の割合を伝える。自身は鍼灸と柔道整復の免許を併せ持っている。

 時間が空けば、「イチアマ」(市尼)呼ばれる高校のラグビー部のコーチ兼トレーナーになる。正式名称は尼崎市立尼崎である。
「始めたのは平成20年です。ああ、もう14年目に入るのですね」
 時の早さに驚く。前任者が急きょ辞め、あとを受けた。

 市尼の練習や試合に参加できるのは基本的に週3回。休診の水曜と土曜の午後、そして日曜だ。水土は大阪・都島区の院から豊中にある第2グラウンドに車で通う。

 部外コーチは有料だ。ただ市からもらう報酬はしれている。ボランティアに近い。監督の吉識伸(よしき・しん)は感謝がわく。
「非常に助かっています。ケガをしてもすぐに処置をしてもらえるし、ラグビーもよく勉強されています」

 吉識は今年52歳。保健・体育教員でもある。同じ兵庫県の報徳学園から大阪体育大に進んだ。陣内より1学年下になるが常に敬語で接する。練習は任せ、外から見守る。
「船頭が多いと船は前に進みませんから」
 丸い顔を緩める。

 陣内の指導の軸はオーストラリアだ。
「息子が中学の時、半年ほど留学をしました。その時、お世話になったホストからすごい量の資料が送られてきました」
 8年前のことだが、その資料をベースに自身の経験を落とし込む。

 ラグビーを始めたのは東灘に入学後。市尼や報徳学園と同じ兵庫にある県立校だ。
「格闘技と球技が混ざって面白い」
 ポジションはFL。監督は田中康憲。大体大OBで今は県協会の会長をつとめている。
「今でこそ優しいけど、当時は怖かったです」
 その田中の下で猛練習に励む。
「夏合宿で、トイレの側溝の水を飲んだ記憶があります」
 当時、給水はご法度だった。

 疲れ果て、泥に近い水をすすった経験は生きる。3年の春、報徳学園と6−12、全国大会予選は3−6。点差は6から3に縮まり、県内トップを追い詰める。この1986年度、報徳学園は66回目の本大会に出場。3回戦で準優勝する熊谷工に3−37で敗れる。陣内のいた東灘は全国レベルにいたことになる。

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