【ラグリパWest】二足の草鞋。陣内健[じんない接骨院・鍼灸院]
大学は東洋医学を学ぶべく、京都にある明治鍼灸(現・明治国際医療)に進んだ。
「父方のおじ2人も医師、兄も歯科医師になりました」
医療は近いところにあった。
卒業後は阪神球団に近い関目病院など3院に勤務。カイロプラティックの資格も得る。
「ラグビーは生きていますね。特にコミュニケーションの部分。患者さんと話をして、情報を取り出す。そして、治療につなげます」
コーチやトレーナーは競技に対する恩返しの意味合いもある。市尼と並行して、大阪の都島工でもトレーナーをこなす。
2000年5月に現在の場所に新規開院した。大阪メトロの都島駅から徒歩1分の好立地。
「関目病院につとめていたこともあって、このあたりで物件を探していました」
隣の城東区にある古巣と物理的な距離の近さやこれまでの結びつきは心強い。
今年、22年目に入った。コンビニより多い、と言われる中、治療院は存続する。通勤に使う車の駐車場代は市価の3分の1。患者からそんな申し出を受ける生き方を続ける。
治療の合間に見る市尼ラグビーの歴史は古い。創部は1948年(昭和23)。学制改革で新制高校になった年に定めている。同じ学校は市尼を含め9校。それ以前は神戸(旧制神戸一中)と兵庫(同二中)があるのみだ。
全国大会出場はない。県予選の決勝進出は97回大会。0−95で全国8強入りする報徳学園に敗れた。陣内の助力もあって、市尼は報徳学園と関西学院の2強に続く、実力校のひとつになってきている。
5月30日、県民大会(春季大会)は星陵に19−42。春を県8強で終えた。
「相手の2年生ナンバーエイトの突破を許してしまいました」
吉識は敗戦を振り返る。市尼は主軸の2人がケガで出場できなかったことも響いた。
勝敗にかかわらず、主将の川口昇馬の陣内に寄せる信頼は揺るがない。
「理詰めで説明してくださるので、試合中、何をしたらいいか明確です。ケガもすぐに見てもらえます。ほかの高校ではこういうことはないと思います」
165センチの小柄なFLは、これからも教えを守り、選手28人をまとめていく。
陣内は言う。
「私は勝利至上ではありません。でも、やるからには勝たせてあげたいと思っています」
その献身が、大きく報われる日が来るまで、二足の草鞋(わらじ)を履き続けたい。