コラム 2021.04.28

ラグビーマン・星出彰彦さん(宇宙飛行士)、国際宇宙ステーションの船長に。

[ 編集部 ]
ラグビーマン・星出彰彦さん(宇宙飛行士)、国際宇宙ステーションの船長に。
2008年11月22日、日本×アメリカがおこなわれた秩父宮ラグビー場を訪れた星出彰彦さん。(写真/BBM)


 ラグビーの経験もきっと生きる。
 アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた『クルードラゴン』で宇宙に向かい、4月24日に国際宇宙ステーション(以下、ISS)に到着した宇宙飛行士の星出彰彦(ほしで・あきひこ)さんが、同27日に日本人2人目となるISS船長に就任した。

 星出さんは、地球に戻るシャノン・ウォーカー船長から、キャプテンに就くことを示す『鍵』を渡された。
 新船長は就任にあたって「ワンチーム」という言葉を使ったそうだ。
「宇宙と地上のすべてのクルーを信頼している。ワンチームとなってミッションを成功させたい」

 星出さんはラグビーマンだ。中学、高校と茨城・茗溪学園に学び、水泳部に所属。授業で楕円球を追った。
 高校2年の途中からシンガポールに留学した際、現地高校のラグビー部に入部した。
 進学した慶大では理工学部体育会ラグビー部で4年間プレー。ポジションは高校時代のWTBからSHへ転向し、活躍した。
名古屋の鶴舞クラブ、ヒューストンの地元クラブでもグラウンドを駆けた。

 2008年6月に宇宙に向かった際は、日本代表のラグビージャージーを持っていった。
 同年11月には、そのジャージーを返還するため、テストマッチの会場を訪れたこともある(日本×アメリカの第2テスト)。
 同日はラグビー記者の取材も受けた。

 そのとき、宇宙飛行士の活動とラグビーの共通点をこう話した。
「宇宙飛行士にとってもっとも大切な能力のひとつは、状況判断力。時間、まわりの状況を理解し、行動する。試合のときに時間、地域を考え、誰がどこにいるか把握した上でプレーするのと似ています。コミュニケーションも大事。瞬時に的確に、仲間に必要な情報を伝え、共有する。そこもラグビーと同じですね」

 宇宙にいる人たちだけでなく、管制官、訓練のインストラクターなど、すべてのポジションの全員が信頼し合って、はじめてミッションをやり遂げることができる。
「みんなでやらないとラグビーにならないのと同じです」と話した。

 4歳で初めて宇宙に行きたいと思った星出さんは、その夢が叶うまで35年かかった。
 飛行士の試験に受かったのも3回のチャレンジの結果だった。
「失敗もありました。ただ、失敗するとへこみますが、立ち止まらなかった。仲間やサポートしてくれる人がいたからです。人はひとりでは生きられないと言いますが、本当ですね」
 追い続けたからこそ、夢を実現できたという。

 どうやったら宇宙飛行士になれるの?
 子どもたちには、いつもこう答えていると教わった。
「3つのことを言います。好きなことをみつけ、とことん突き詰めて。いろんなことに関心を持ってチャレンジして。そして、仲間を大切に」
 経験を重ね、「必ず壁にぶつかる。でも、立ち止まらないで」と付け加えるようになったそうだ。

「僕から見れば、日本代表の選手たちは、次元の違う憧れの存在」と話していた52歳は、人類の夢を背負って、約半年間、ISSで船長としての責任を果たす。

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