コラム 2021.04.23
【コラム】延びる試合時間に思う

【コラム】延びる試合時間に思う

[ 直江光信 ]
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 できるだけ丁寧、正確に。そんな心理も理解できる。国内最高峰の戦いだけにひとつの勝敗の価値は重く、海外の超一流選手も多数参戦するとあって一つひとつのプレーレベルは極めて高い。様々な角度から映像を確かめてようやく実相が明らかになるケースも少なからずあるがゆえに、「念には念を入れてTMO」に傾くのも仕方がないとは思う。

  一方で、TMOの回数が増え、その判定が長引くことによって、失われるものがあることも忘れてはならない。観客席の視線がビジョンへ向く時間が長くなるほど、ピッチの緊迫感はしぼんでいく。試合が白熱してきたところでプレーが止まり、仕切り直しの頃にはすっかり熱気が冷めきっている――なんてシーンを目にするたびに、やるせない気持ちになる。

 繰り返すが「正確、丁寧に」はよくわかる。レッドカードを出すような場面で慎重に慎重を重ねるのは当然だろう。ただしゲームは生き物だ。微妙なプレーが起こるたびに試合が止まり、そのチェックに長い時間がかかれば、どうしたってリズムは生まれない。それは、選手たちにとっても、観戦するファンにとっても、幸せなことではないはずだ。

 海外の試合、たとえばスーパーラグビーやハイネケン・チャンピオンズカップを見ていると、大会全体がそうした部分に高い意識を持って運営にあたっていることがうかがえる。TMOの回数がトップリーグに比べて圧倒的に少ないというわけではないが、リプレーの検証から最終的な判断を決定するまでが総じて早い。マッチオフィシャル間のコミュニケーションも簡潔で、主審が強いイニシアティブをとってスピーディーにゲームを進めていく。だから空白の時間にストレスを感じることがほとんどない。

 おそらくその背景には、「あまりに判定に時間をかけるとラグビーがラグビーでなくなってしまう」という危機感があるのだと思う。ラグビーは連続する流れの中でモメンタムが行ったり来たりするスポーツだ。プレー間隔が必要以上に空いては、その醍醐味が薄れてしまう。ゲームの躍動感を高めることは競技の盛衰に直結する要素であり、だからこそプロ化が進むヨーロッパや南半球では、長年TMOの運用について厳しい議論が交わされ、改善が進められてきた。

 日本のレフリーがやみくもに時間を浪費しているとは思わない。ただ、よりよいラグビーの実現のためにレフリングのテンポアップは不可欠だ。TMOに頼りすぎず、それを適用するにしてもスピード感を持って迅速に判断を下す。そうした意識を持つことは、一連の速い流れの中でプレーを見極めてジャッジするというレフリーのスキル向上にもつながると思う。

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