【ラグリパWest】一歩引いて、チームを守る。桑原久佳 [関西大学ラグビー部副顧問]
桑原久佳は関西大学のラグビー部にとって、「中興の祖」である。
監督として、母校をAリーグのステージに引き上げた。「カンダイ」の創部は1923年(大正12)。関西の強豪大では同志社、京都に次ぎ3番目の歴史を誇る。
桑原はこの4月から、11季つとめた監督を退き、副顧問(副部長)になった。
「そろそろ違う人間がチームを見ないといけません。そうしないと強くならない」
2か月前に52歳になった。男として脂の乗りを感じながら、道を譲る。
副顧問として、部のトップである顧問の山本英一(国際部教授)を補佐しながら、これまでやってきた高校生のリクルートなどチーム強化をより深める。
後任監督に指名したのはコーチから昇格した森拓郎。名古屋商科大を卒業後、サニックスなどでバックローとしてプレーした。兵庫・芦屋の出身ではあるが、卒業生ではない。
桑原は強化に関して柔軟だ。
「専門分野は任せる、ということです」
名門にありがちな権高さはない。3学年下の森を「さん」づけで呼び、敬語を使う。
学生の質問も指導陣にわざと振る。
「自分がわかっていても、答えません。指示系統はひとつにしないといけません」
監督時代もグラウンドのことはプロ契約を結ぶ2人、森と園田晃将に任せていた。
ヘッドコーチの園田もこの大学とは関係ない。愛知学院大に学び、サニックスでは森と一緒だった。現役時代はFB。関西大を指導したのは森より先だが、年はひと回り下だ。長幼の順での起用に異論はない。
桑原は大学職員だ。エクステンション・リードセンターに管理職として勤務する。
「学内の予備校みたいなもんです」
TOEICなどの英語資格や公務員試験、簿記検定など学生のサポートをする。
大学卒業後、職員一筋に来た。広報や学部の事務室などに勤務する。4学年上で同じ職員として評価が高い高岡淳とは近い。
「僕のお手本。お世話になっています」
野球部出身の高岡は総務局長であり、常任理事である。
野球部は学内を代表するクラブだ。高岡の先輩である右腕・山口高志を擁し、1972年(昭和47)、初の大学4冠(春秋リーグ戦、大学選手権、明治神宮大会)を達成した。高岡は千里山キャンパスにおける人工芝野球場の2016年完成の一助となる。その実力者に可愛がられる性格を桑原は持っている。