昨季0-97が29-31。NTTドコモ、最後に逆転負けも、神戸製鋼を追い詰める
0-97。
トップリーグ2020でNTTドコモは神戸製鋼に記録的大敗を喫した。
悪夢の払拭。
真価を問われる戦い。
そんなふうに形容された一戦で、今季好調のレッドハリケーンズがどのようなパフォーマンスを発揮するか注目された。
結論から言えば、昨季の力関係は過去のものとなっていた。
前半は神戸製鋼が14点。NTTドコモが13点。緊張感のあるゲームとなった。
先制したのはNTTドコモ。蹴り込んだキックオフのボールを活かし、3点を得る。立ち上がり30秒で相手反則を誘い、PGを決めた。
8分過ぎにはPKを与え、意表を突かれてキックパスからトライ(WTBアンダーソン フレイザー)、ゴールで逆転を許す。しかし、その4 分後にはスクラムから仕掛け、SHのTJ・ペレナラがインゴールに入ってスコアを8-7とひっくり返した。
NTTドコモは特に前半、スクラムが劣勢だった。29分過ぎには自陣ゴール前の押し合いでペナルティトライを許す(8-14)。
ただ、それでも集中力は切れなかった。
その4分後には、久しぶりに入った敵陣で得たラインアウトからの攻撃を攻め切った。SO川向瑛がインゴールに転がしたキックを、WTBマカゾレ・マピンピが押さえた。
ハーフタイム直前のピンチもしのぎ切り、前半を13-14で終えた。
後半も互角の戦いは続いた。
決着がついたのは後半42分半過ぎ、インジャリータイムに入ってからだった。NTTドコモはアップセット寸前のところまで神戸製鋼を追い詰めた。
レッドハリケーンズは、10分過ぎから好ディフェンスで相手陣へ攻め入った。FLヴィンピー・ファンデルヴァルト、途中出場のSOマーティ・バンクスのビッグタックルで好機を作る。18分にはバンクスのPGで16-14と逆転した。
その直後、リスタートのキックオフボールを落球したピンチからすぐにトライを奪われ(NO8グラント・ハッティング)逆転されるも、直後にはラインアウトから攻め、FBトム・マーシャルのトライ、バンクスのゴールで23-19とする。
さらに5分後にはPGを追加して26-19とした。
さらに、残り約10分の中で同点、勝ち越し、そして逆転とスコアは動き続けたから、ファンの腰は浮きっぱなしだった。
神戸製鋼は後半30分、ラインアウトからの攻撃でゴール前へ迫り、途中出場のSOアーロン・クルーデンがインゴールにキックを転がす。それをFB山中亮平が押さえた。ゴールも決まり26-26とした。
その直後のリスタートのキックオフから、NTTドコモも果敢に攻め続けた。フェーズを重ねてノットロールアウェイを誘う。後半34分、バンクスのPGで勝ち越す(29-26)。
残り約5分、NTTドコモはほとんどの時間、ボールを手にし続けた。
反則をしても神戸製鋼のPKが外に出ず、攻撃に転じる。勝利に限りなく近づいた。本当に、あと少しだった。
神戸製鋼の逆転劇は、残り1分を切ったところから始まった。
NTTドコモの重ねるフェーズアタックの途中でボールに絡み、オーバー・ザ・トップを誘う。それをきっかけに相手ゴール前にPKを蹴り込み、最後はモールから途中出場のHO松岡賢太がトライラインに飛び込んだ(ファイナルスコアは31-29で神戸製鋼の勝利)。
ルーキーで殊勲のトライを挙げた松岡は、「初トライがチームの勝利に結びついて良かった」と笑顔を見せた。
「プレッシャーを感じる場面でしたが、リザーブに入った時から、必ずああいう状況でスローすることがあると予測して練習をしてきたので自信を持って投げました」
モールの最後尾で状況を見つめ、機を見て飛び込んだ。
試合終了と同時に、両チームに大きな拍手が送られた。
惜しくも敗れたNTTドコモのバンクスは、「昨年大敗していた試合にも出ていた」と回想し、こんなことを言った。
「勝てると思ったし、勝ったと思った。それでも負けて悔しいけど、終わった瞬間、(チームの進化を感じていたので)喜んでいいのかどうか分からなかった。涙が出そうだった」
この試合の結果により、神戸製鋼のホワイトカンファレンス2位と、NTTドコモの3位が決まった。
レッドハリケーンズが本当に変わったと確信できた80分だった。