国内 2020.12.31

明大の石田吉平は「罠みたいなの」を仕掛ける。1月2日に大学選手権準決勝

[ 向 風見也 ]
明大の石田吉平は「罠みたいなの」を仕掛ける。1月2日に大学選手権準決勝
2季ぶりの大学選手権優勝を狙う明大のキーマンとなる石田吉平(撮影:向 風見也)


 相手のキックを捕る。目の前に防御網を見据える。ここで石田吉平は、「罠みたいなの」を仕掛けるという。

 複数名いるタックラーのうち、「ミスマッチ」と見られるやや大柄な選手をターゲットに定める。

 一定方向へ「おびき寄せて、おびき寄せて…」。刹那、その逆側へギアを入れる。

 大きく突破する。

「走っていくなかで(視線や身体の動きで)罠みたいなのを仕掛け、それに(相手防御が)引っかかったら、(ステップを)切る…みたいな。考えながらやっています」

 誰が呼んだか「和製コルビ」。明大ラグビー部が誇る身長167センチ、体重75キロのWTBは、南アフリカ代表WTBのチェズリン・コルビを引き合いに出される。

 身長170センチ、体重80キロのコルビとやや背格好が似ていて、コルビと同じく電光石火の走りを繰り出す。空中戦にもコルビのごとく臆せず挑み、「弱点を強みにできたら。(コルビには)勇気をもらいます。小さい人の可能性、あると思います」。守っても強烈なタックルとジャッカルを繰り出す。2年目ながら頼れる主力だ。

「明大のバックスリー(WTB、FBの総称)を背負う。ピンチの時にもこの人にボールが渡ったらゲイン、トライをしてくれるだろう…という選手になりたいと思っています」

 幼少期から中学卒業まで、尼崎ラグビースクールへ通った。身体の成長が止まった中学時代に「自分が小さいと気づいた」が、「大きい相手を倒すのが快感になりました」。小学校の頃は最前列のPRでスクラムを組み、中学時代もFWの後列でプレーした。力勝負を怖がらないのはそのためだ。

 大阪の常翔学園高では、野上友一監督の勧めで現在のWTBへ転じた。すると7人制日本代表の予備軍にあたるセブンズ・ユースアカデミーに呼ばれたり、高校日本代表にリストアップされたりと、キャリアアップを果たせた。

 高校生活最後の全国大会でFWのNO8に起用されたのを含め、「野上先生のアイデアに感謝しています」と言い切る。

 昨季は7人制日本代表の活動やけがの影響で、明大での15人制シーズンには関われなかった。しかし今季はチームに専念し、関東大学対抗戦の全6試合にWTB、FBとして先発した(日体大戦は不戦勝)。

 1月2日には、東京の秩父宮ラグビー場で大学選手権準決勝に挑む。

 対する天理大の小松節夫監督には、主将の箸本龍雅とともに明大の要注意人物に挙げられた。

「箸本君は最近、(攻守で)乗りに乗っている。さらには石田君のステップ…」

 シーズン終了後には、7人制日本代表候補として延期された東京オリンピックを目指す。

 同じグラウンドを異なる人数で動く7人制と15人制は、似て非なる競技と見なされる。それでも石田は、「(どちらも)ラグビーなのは変わらない」。慌ただしい日々を送るのも好きだという。

 まず見据えるのは正月の大一番。いつもの心で芝に「罠みたいなの」を張り、勝利の立役者となりたい。

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