クラブに厳しさと粘りを生んだ。流経大・津嘉山廉人のマインドチェンジ。
自分の意識を変えた。仲間の意識も変えられた。
流経大ラグビー部の津嘉山廉人は、4年生となるや周りのプレーや意識について厳しい指摘をいとわなくなった。同級生の松田一真副将からも「津嘉山が一番(厳しい意見を)言います」と見られる。
「これまでは自分のプレーに集中すればよかったですし、(本当は)厳しいことは言いたくはないんですが…。自分も4年生になって周りも見ていかなきゃいけないなか、厳しく言わないといけないなぁと。それで、自分が一番厳しく言っているような感じに見られていると思います」
例えばFW同士でモールを組んだ際、頭を向ける方向や姿勢の高さなどに問題があれば、その場で改善を求める。前年度に同じようなことがあっても「思っていても(当時の)4年生が言ってくれるのでいいかなぁ、という甘い考え」でやり過ごしたようだが、いまは心を鬼にする。
「自分自身、あまり言葉がうまくないので、気持ちを詰めて一人ひとり伝えられたらいいなと思って、アドバイスや注意をする時も皆にじゃなくて個人に言うようにしています。皆、言ったら修正してくれるので、その部分では対応してくれて助かってはいます」
今季の流経大では、津嘉山を含めた4年生がグラウンド内外で細部へこだわる。練習後は主力チーム同士で当日の練習を振り返り、グラウンド脇のクラブハウスの周辺を率先して清掃する。
10月4日から参戦の関東大学リーグ戦1部では開幕から白星を重ね、たとえ勝っても反省点を抽出するよう意識してきた。
11月14日には、埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で前年度2位の日大に40-14で快勝した。
黒と赤のジャージィの突進を、白と金色のジャージィのタックルが跳ね返していた。起き上がりも速かった。昨季は28-34と負けていた相手を下した要因は、試合を追うごとに防御を改善させてきたからだろう。身長187センチ、体重105キロの右PR、津嘉山もその隊列で光った。
続く21日には、結局3連覇の東海大に一時は12-38とされながら終盤には38-38と同点に追いついた。この日は会場の東京・秩父宮ラグビー場で、試合中の修正力を示した。
防御時の選手同士の間隔を広げたことで、向こうのワイド攻撃へ対応。その流れで留学生が爆発したのだ。最後は38-55で敗戦も、結局、リーグ戦の順位を1つ引き上げて2位とした。
「自分や主将、副将が厳しく言うことによって、雑なプレーが減ってきた。大きく変わったのがペナルティの部分で…」と津嘉山。リーグ戦中、1試合で2ケタ台の反則を犯した回数を3から2に絞った。普段を思い返しても、練習の合間に集合すればすぐに皆が小さな円を作る。部全体が引き締まったのを感じる。
「(お互いに)プレーひとつにしても細かいところまで追求するようになった。練習を見ている周りの人(控え選手)もしっかりアドバイスを。以前からしてきたことの、質が高くなった」
というのも12月5日、秩父宮でやや低迷する大東大とのリーグ戦最終節を19-10と競った。チームはその日、遅くまでミーティングを実施。練習へ臨む姿勢を再度、見直していた。手綱を締めたばかりだった。
「このままでは天理大とかには勝てない。一人ひとりの意識を変えていかないと」
ここでの「天理大」とは、関西大学Aリーグの首位チームだ。流経大は筑波大との大学選手権3回戦を19-19で引き分けて抽選で準々決勝へ進み、前年度の同じ位置で28-58と大敗した天理大にリベンジマッチを仕掛ける。
津嘉山の言う「意識」の高まりを随所ににじませ、クラブ史上初の4強入りを目指す。