偏愛・食い込み系記者の出場国プレビュー! ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ【イタリア/フィジー】
シックス・ネーションズの国々にジョージアと南洋・フィジーを迎えて行われるオータム・ネーションズカップ2020が11月13日に幕を開けた。ラグビーリパブリックでは、出場各国に深く食い込む人物に原稿依頼。愛と造詣あふれるチーム展望を掲載する。最終回はグループBからイタリアとフィジーをピックアップ。ジャンルカ・バルカ(ラグビーライター、コメンテーター)と、2019年W杯ではフィジー代表のチームリエゾン(世話役)を務めた池貝亨氏(ラグビーマガジン編集デザイナー)にきいた。
次世代フィジー、NZ出身指揮官のリレー
私が同行した2019年W杯のフィジーは、釜石でウルグアイにアップセット負けを喫するなど、決勝トーナメント進出を逃し大きな失望に包まれた。再起を図るフィジーは今年1月、新指揮官を招へい。2015年大会のスコットランド代表ヘッドコーチ(HC)のニュージーランダー、ヴァーン・コッターがタクトを振る。やはりNZ人の前指揮官、ジョン・マッキーが6年をかけて構築した「トータルラグビー」の文化を生かし、次なる名将が「フライング・フィジアン」のポテンシャルを引き出そうとしている。
10月中旬発表の32人スコッドは9人が国内、他はフランスなど欧州ベースの選手たち。2019年大会メンバーは13人と、大きく入れ替わった。10月29日からフランスのリモージュでキャンプを張り、本格的な新チームのスタートを迎えた。
「国内の9人は能力が高く、周囲のアドバイスでより力を伸ばすだろう。経験ある選手たちには、そうしたチームへの働きかけを促している」とコッターHC。
しかし、走り始めたばかりのスコッドにはさっそく、試練が。
チーム内に新型コロナウイルス検査で陽性者が出て、11月6日に予定されていた準備試合のポルトガル戦に続き、10月15日の大会初戦、フランス戦、そして21日のイタリア戦が中止となってしまった。
15日に、初戦に向けて発表されていたメンバーをここに残しておきたい。
★印は2019年W杯メンバー
【FW】
ペニ・ラヴァイ(クレルモン・オーヴェルニュ)★、サム・マタヴェシ(ノーサンプトン)★、メサケ・ドンゲ(ブリーヴ)、テヴィタ・ラトゥヴァ(スカーレッツ)★、アルバート・トゥイスエ(ロンドン・アイリッシュ)、メスラメ・クナヴラ(エディンバラ)、キティオネ・カミカミザ(ブリーヴ)、ジョニー・ダイアー(ビアリッツ)
【HB】
フランク・ロマニ(レベルズ)★、ベン・ヴォラヴォラ(ペルピニャン)★
【TB】
ネマニ・ナンドロ(レスター)、レヴァニ・ボティア(ラ・ロシェル)★、ワイセア・ナヤザレヴ(スタッド・フランス)★、チョスア・トゥイソヴァ(リヨン)★
【FB】
キニ・ムリムリヴァル(レスター)★
【リザーブ】
ハエレイティ・ヘテット(ワイカト)、サムエラ・タワケ(ナイタシリ)、テモ・マヤナヴァヌア(ノースランド)、マヌエリ・ラトゥニヤラワ(ナドロンガ)、シミオネ・クルヴォリ(タイレヴ)、セルペペリ・ヴラリカ(スバ)、セタレキ・トゥイズヴ(クレルモン・オーヴェルニュ)
発表されたスコッドで目を引くのはBK陣。経験も豊富で破壊力がある。その筆頭は日本のラグビーファンにもおなじみのWTB/CTBネマニ・ナドロ(195㌢、123㌔)だ。「フライング・フィジアン」こと同代表の象徴的存在。かつてNECにも所属し、トライ王を2度獲得している。コッター HCとは、フランス・モンペリエ所属時(昨季まで)の師弟関係があり、信頼し合う間柄。フィジー代表への復帰は、2019年大会直前の代表リタイア以来だ。
2019年大会でも活躍した欧州注目のCTB/WTBセミ・ランドランドラもスコッド入りし、主将に任命された。遠征ではギターを持参し、美声も披露する。ストイックな姿勢も印象的だ。ガーデンアイランドと呼ばれる美しい島、タベウニ島の出身で、10代に時給100円で本島にある金鉱山で働き、家族を支えた。U20代表での活躍で、豪州ラグビー・リーグ(13人制)のパラマタ・イールズにスカウトされ、ブレイクしリーグの大スターに駆け上がった。2017年に15人制へ転向し、鳴り物入りでフランス・トゥーロンに移籍。ボルドー・ベグルを経て、W杯後にブリストルへ移籍し期待に応えた。フランスの報道ではコロナウイルス検査での陽性者の一人とされ、初戦のメンバーからも漏れた。
代わりにゲームキャプテンに指名されたCTBのレヴァニ・ボティア、チョスア・トゥイソヴァはともに相手を吹っ飛ばしながらの突進が見物。
FWはほとんどが入れ替わった。大黒柱のLOレオネ・ナカラワは負傷で合流が遅れ、テストマッチ経験の浅いメンバーで強豪との連戦はまさに試練となる。
新人のうちPRハエレイティ・ヘテットはかつてのフィジー代表の大型PRチョエリ・ヴェイタヤキの息子で、今後が期待される。
またコッターHCは国内リーグもしっかりと見て回り、この国のラグビーの、もつポテンシャルを最大に発揮させようとしている。
ラグマガ編集部で話題となっている新鋭は、NO8で出場予定だったジョニー・ダイアー(ビアリッツ)だ。ステップ、ランはもちろんだが、最大の特徴はタックル後のボールゲット。巨大なお尻と野太い下半身で相手の動きを封じ、上に乗り、瞬く間にボールに仕掛けて攻撃権を奪う。そのハードワークぶりは、中学生や高校生のお手本にもなりそうだ。
若手の潜在能力を、経験ある選手たちがサポートし、ともに存在感を発揮していきそうな新しいフィジー。中止となる試合がこれ以上増えないことは、多くのラグビーファン共通の祈りだろう。
【WOWOW番組情報】
ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ
11/13(金)~12/6(日) WOWOWで独占放送&配信!
【第2節】
グループA
11/21(土)夜11:50 イングランドvsアイルランド
11/21(土)深夜2:00 ウェールズvsジョージア ※WOWOWメンバーズオンデマンド先行ライブ配信
11/22(日)朝7:05 ウェールズvsジョージア ※ディレイ放送
グループB
11/22(日)深夜12:00(23日の0:00) スコットランドvsフランス