コラム 2020.11.06
【ラグリパWest】奇特さを示す。包行良光 [キャニコム代表取締役社長]

【ラグリパWest】奇特さを示す。包行良光 [キャニコム代表取締役社長]

[ 鎮 勝也 ]



 3つ上の冨岡鉄平とは一緒に練習をした。
「テッペイさんが来ると、すごい楽。2本目に入るんですが、1本目をけちょんけちょんにいわしてくれました」
 後年、CTBとして日本代表キャップ2を得る先輩は切れまくっていた。冨岡は2014年度から3季、東芝の監督もつとめた。
 包行は、母校にもタックルバッグやプロテインなどの援助を怠らない。

 卒業後は帝京大に進む。足首のねんざ癖もあって、体育会系には入らなかった。
 一般企業で2年働き、父・均(ひとし)が社長をつとめた当時の筑水キャニコムに入る。父は今、会長として支えてくれている。

 社内では海外事業を担当し、アメリカ西海岸のシアトルで20代後半を過ごした。
「今まで30か国くらいは行きました」
 早くからTwitter やYouTubeで情報発信。プエルトリコからコーヒー豆用に運搬車の注文が入る。カリブ海に浮かぶアメリカ領の島まで飛んだこともある。
「立ち上げた時の売り上げは3億。今は22億円になりました」

 キャニコム(CanyCom)には、「Can Carry Any Communication」を元に、「Caneyuki Company」の意味も込められている。
 ユニークな会長が「まさお」と命名した四輪駆動の乗用草刈機は2015年、「ものづくり日本大賞」で製品・技術開発部門の優秀賞に輝いた。

 包行家は鎌倉時代から続く刀鍛冶の家系である。その始まりは初代・包永。代表作である太刀『手掻包永』(てがいかねなが)は国宝。包行は20代目に当たる。商品は変わっても、ものづくりの血は受け継がれている。

 テレビ東京が制作する『カンブリア宮殿』でも、「世界で戦うニッチな企業」として2014年に取り上げられた。包行は振り返る。
「福岡では最初に取り上げられた一風堂さんとふくやさんとの間でした」
 ラーメンや明太子で知れ渡る企業と並び、経済に強いテレビ局から評価される。

 祖父が1955年(昭和30)に興した会社は従業員300人ほど、本社を含め、全国9か所に事務所などを構えるまでになった。

 包行は、経営に力を尽くしながら、ラグビーを助ける理由を話す。
「人間形成に必要なスポーツだと思うからです。耐えることや理不尽を学びます」
 遠い駅の切符を走って買って来い、と言われた経験もある。そういうことを乗り越えた先に、社会でもまれても生きる力がつく。

 包行は言う。
「下手でもラグビーを続けてほしい」
 高校の同期は26人。自身はレギュラーではなかったが、ある試合で、修猷館のNO8と対戦する。
「ボコボコに抜かれました」
 山本英児。慶應に進み、九州電力に戻る。日本代表キャップは4。格段の差があった。

 それから、20年以上が経つ。
 社会に出てからは、九州電力の社員と経営者の立場になった。
「今はエイジ君と人生においては、対等だと思っています。長い人生の中で挽回はいつでもできる。18の劣等感は屁みたいなもの」
 ラグビーはやるに値するスポーツ。その一助になるように後進に手を差し伸べる。

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