【ラグリパWest】入替戦だけが大学ラグビーではない。龍谷大学
藤谷は京都の神川中の教頭だ。この中学は日本代表キャップ21を持つ坂手淳史(パナソニック、HO)の母校でもある。
教員と監督との兼務は3年目に入った。かつてラグビー部の顧問をつとめた西京極中では、日本代表キャップ2の安井龍太(キヤノン、FL)の成長に手を貸し、藤森(ふじのもり)中では、ケガが少なくなるように校庭に天然芝を植えた。
現役時代はPRだった。東山から龍谷大に進む。4年時の1989年には入替戦で立命館大を24−4で破り、初のAリーグ昇格を実現させたメンバーのひとりになる。
その創部は1929年(昭和4)。関西Aリーグの最高位は3位。大学選手権には7回出場するも、すべて初戦負けしている。
2007年の入替戦で摂南大に22−62と敗北。18年過ごしたAリーグから降格した。以降、再昇格はない。
ただ、関関同立に続く、関西有力私大の「産近甲龍」(京都産業、近畿、甲南、龍谷)の一角であるため、高校生の人気は高い。
主な日本代表はキャップ5で監督経験者の大内寛文(リコー、FL)や現役では同1の伊東力(ヤマハ発動機、WTB)らがいる。
ジャージーの色は赤。仏教系の大学らしく、梵字が薄く入っている。2013年度、スクールカラーを紫紺から変更したのに合わせて、従来の青から変わった。
ラグビー部が活動している南大日グラウンドはサッカー、アメフトとの共用だが、今年は人工芝が張り替えられている。
その新装グラウンドで9月19日にはチームを4つに割り、部内マッチを行った。
「今年に入って初めての試合ですね」
藤谷はほほ笑む。フルタイムのOBコーチ、FWの河本明哲、BKの室屋達也はもちろん、日本代表キャップ1を持つ羽根田智也(ワールド、LO)や部長の原田太津男(たつお)の姿もあった。原田は経済学部教授。洛北の高校3年間、ラグビー部に在籍した。
南大日は「オール龍谷」の空気が満ちる。
79人の選手を主将としてまとめるのは小池健雄だ。兵庫・報徳学園出身のHO。監督の秋シーズンへの思いを理解する。
「目標がなくなった訳じゃあありません。Bでの全勝に向かってやるだけです」
そして、続けた。
「試合が全部なくなった、僕らの学年は引退ですから」
藤谷の指導は週末に限られるため、小池を中心にした選手の自主性が磨かれる。
「キャプテンをやったことがなかったので、最初は何をしていいかわかりませんでした」
高3時の主将は栗原勘之(かんじ)。今、同志社大の副将をつとめる。HO小池、PR栗原のバインドで臨んだ96回全国大会は、3回戦敗退。石見智翠館に19−24だった。
龍谷大は今年1月から本格的に練習をスタートさせ、3月下旬からコロナのために全体練習を休止した。再開する7月下旬まで、小池はオンラインでの週2回のトレーニングやミーティングの先頭に立った。
「徐々に運営に携わることが楽しくなってきました。色んな人たちの意見を聞きながら、自分たちで回していることが実感できます」
龍谷大の秋初戦は10月25日に予定されている。相手は元Aリーグで、大学選手権出場実績もある大阪経済大。大阪・摂津にある相手校グラウンドで、キックオフは12時30分。まずは3チームのリーグ戦だ。
入替戦ではなく、その先にある人間的成長を目指す「リューダイ」。それは学生スポーツのあるべき姿を示している。