【再録・ジャパン_06】中村亮土[2013年10月号/解体心書]
そのためにもこれからの数か月間、チャンピオンチームの主将として先頭に立つ。誰からも尊敬されるような日々を過ごし、日本一になりたい。就職先も、自分を高められる場所に決めた。一分一秒も無駄にしない覚悟がそこにある。
「キャプテンになってから、それらしいことは何もしていない」と苦笑いする男は、他校の選手たちが日本代表という視線で自分を見つめることも、リーダーの一挙一動を見逃さない仲間の視線も、まったく意に介さないと言う。
「去年ジャパンに選ばれてから、周囲が自分を見る目が変わりました。だから、それに見合うだけの姿勢、態度でいつもいなければならない。そう思えるようになりましたから」
窮屈でなく自然体。人としての成長がそこにある。
連覇を続けるチームのことを、「上手くなりたいと思うなら、それをとことん追求できる場所」と言う。
「本当にこのチームに来てよかった。去年の泉さん(主将)も優勝直後に言いましたが、支えてくれている多くの方々に感謝、です」
年々応援してくれる人が増えていることを感じている。国立競技場のピッチに立つと、それが強く感じられるのだ。
特に昨季は見事な試合内容で、スタンドを赤く染めた人たち以外からも大きな祝福を受けた。
「一緒に喜んでくれる人たちが多くなればなるほど、やっぱり嬉しいですね。観ている人たちに感動を伝えられるようなラグビーをやって、帝京の環境のすばらしさを知ってもらいたい。そして、それを知った人たちに、どんどん帝京に来てほしい。そうなれば、チームの文化は継承していけるし、長く強いチームでいられると思っています」
亮土の名には、両親の思いが込められている。「朗らか」「清々しい」という意味も持つ「亮」の字。あたたかな気持ちを持ち、大地に根を張って生きてほしいと名付けられた。
南国は鹿児島生まれ。中学校まではサッカーに熱中したことで下半身がたくましく育ち、高いキック力を身につけた。サッカー名門校でもある鹿児島実業に進学しながら楕円球のフットボールに転向したのは、「もともと父のすすめがあって、高校に入ったらラグビーをやると決めていた」からだ。父・信也さんは東京にいた若い頃、日本選手権や満員の早明戦観戦でスタジアムを訪れ、このスポーツに魅せられた。楕円球を追ってくれたら…の思いは、自然と息子に伝わった。そして亮土は、いつも期待に応えながら成長を続けた。