国内 2020.06.27

関西学院大・田畑司。#ラグビーを止めるな2020投稿の突貫フロントロー。

[ 多羅正崇 ]
関西学院大・田畑司。#ラグビーを止めるな2020投稿の突貫フロントロー。
低い姿勢で前へ出る田畑司。(写真/関西学院大学ラグビー部)



 兵庫・武庫川の河川敷がロードワークの定番コースだ。
 関西学院大の4年生PR/HO田畑司(たばた・つかさ)。

 173センチ、110キロ弱のFW第1列だが、坂道ダッシュを混ぜながら約7キロのコースを週3回、走破する。入学当初から掲げる目標に突き動かされている。
「トップリーグ、トップチャレンジリーグでプレーしたいという想いは人一倍あります」
 脚力を活かしたヒットには自信がある。未来へ向けて武器は磨き続ける。

 新型コロナ禍により異例のスタートとなった大学4年目のシーズン。
 自宅待機後、チームは週5回の2部練習になったが、午前はチームとしてのオンライントレーニング、午後は各自でウエイト、フィットネスという練習メニュー。
 田畑はそんな午後の練習時間で、自宅近くの武庫川をフィットネスの練習場にした。学生主体で運営する関西学院大で自主性は身についている。いつも一人で河川敷に向かい、心身と向き合った。

 そんな自己研鑽の日々を送っていた5月、「#ラグビーを止めるな2020」の活動を目にした。コロナ禍でアピール機会を失った高校3年生にSNSでプレー動画を投稿してもらい、進路支援につなげようというインターネット活動だ。
 しばらくして、チームメイトで1歳上のSO/FB奥谷友規から連絡が来た。
「奥谷さんとはトップリーグでプレーしたいという思いを共有していました。奥谷さんから投稿しないかと連絡が来たので、『僕も考えていました』と答えました」

 1日だけ悩み、チームから映像を取り寄せた。
「僕自身で動画を選んで編集をしました。初めてだったので編集の方法を覚えることから始め、完成に時間が掛かりました。いま声は掛かっていませんが、トップレベルを目指していることを知ってもらえたら、と思っていました」
 投稿したプレー映像は、1か月で再生回数4万を超えた。田畑の意志は確実に拡散した。

 兵庫・西宮ラグビー少年団で4歳から走り始めた。いつも2歳上の兄・凌(キヤノン)を追いかけていた。
 兄は報徳学園から京都産業大に進んだが、弟は関西学院高へ。高校入学と同時にフッカーに転向し、2年時には花園ベスト8を経験した。

 キャリアの転機は2018年10月14日だった。
 大学2年目の関西大学Aリーグ、大阪・鶴見緑地で行われた近大戦で、思わぬ公式戦デビューを果たした。
「アップの補助をしていたんですが、リザーブだった先輩がケガをして急きょメンバーに入りました」
 後半から途中出場して公式戦デビュー。初トライを奪うなど55-19の快勝に貢献した。#ラグビーを止めるな2020の投稿動画(動画1本目)では、1分22秒からのシーンがその初トライだ。デビュー戦で実力を認められた田畑はその後主力組が定位置になる。

 なぜ緊急出場のデビュー戦で結果を出せたのか。
「Bチームから脱するため、大学1年の冬から苦手だった筋トレに取り組んでいました。筋力には絶対的な自信がありました」
 やるべきことはやってきた——そんな自信があったから、突然のデビューに動じなかった。
 チーム事情によりプロップ(1番)になった大学3年も主力級として活動。「去年のベストゲーム」と振り返る大学選手権準々決勝の明大戦(14-22)にも出場した。

 大学4年となった今年はウエイトリーダーを務めている。コロナ禍で練習禁止となった直後の3週間は、チームトレーナーと協力しながら筋力トレーニングのメニューを自主作成した。
 道しるべはトップレベルでのラグビー。しかし目下の目標はSO/FB奥谷らと共に、関西学院大の最上級生としての責任を全うすることだ。
「今年は最上級生が少ないので、それをカバーするくらい、リーダー陣だけではなく全員で引っ張っていけたらと思います」
 河川敷の空に未来を描きながら、一人のラガーマンとして、チームとして、挑戦を続ける覚悟だ。


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