コラム 2020.06.04

【コラム】できなかった時間

[ 直江光信 ]
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【コラム】できなかった時間
身体接触のあるラグビーは最も「通常練習」が再開しづらい競技の一つ(写真はハリケーンズのアサフォ・アウムア/Getty Images)

■でも、この数か月間の空白は、「何もしなかった時間」とは違う。絶対に。

 もとより自宅が作業場で、外で仕事をするのは取材や打ち合わせがある時くらいだから、リモートワークは慣れたものだ。丸一日、一歩も外出せずにパソコンの画面をにらみ続けることだって以前からざらにある。自粛要請により近所の穴場店を巡る楽しみはしばらくおあずけになったが、おかげで自炊のレパートリーはずいぶん広がった。

 何もかもが不便で苦痛だったかといえば、そうでもない。こうなってよかったとは絶対にいえないけれど、こうなったことで、今までできなかったことに手をつける時間ができたのも事実だ。

 ただ、自分の意思に関係なく行動を制限しなければならないことが、これほど辛いとは思わなかった。好きな時に、好きなところへ出かけられる自由が、いかに貴重でありがたいことか。あらためてそれを思い知った。

 そしてスポーツの、ラグビーのない日常が、こんなに寂しく味気ないものだということもひしひしと痛感した。楽しいことがなかったわけではないのに、この3か月の記憶の中の風景を振り返ろうとすると、どれも色彩のない古びた写真を見ているように感じる。ふたたびグラウンドでキックオフの笛を聞く時、いったいどんな感情が湧き上がってくるのか。いまは想像もつかない。

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