コラム 2020.06.04
【コラム】できなかった時間

【コラム】できなかった時間

[ 直江光信 ]
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 5月25日に国内のすべての地域で緊急事態宣言が解除され、街には徐々に活気が戻りつつある。同31日には日本ラグビー協会から、競技活動再開に向けたガイドラインが発表された。6月13日からはスーパーラグビーのニュージーランド5チームによる国内大会、「スーパーラグビー2020 アオテアロア」が始まり、7月3日からはオーストラリアでも同様の国内大会がスタートする(つくづくサンウルブズが参戦できなかったことが悔やまれる)。ラグビー解禁の足音は、着実に近づいてきている。

 そこでイメージはふくらむ。久しぶりにチームで集まった時、選手たちはどんな顔をしているだろうか。ピッチを踏みしめるスパイクの懐かしい感触は、きっと格別だろうな。澄み渡る青空に、高く蹴り上げたボールが吸い込まれていく――。そんなシーンを思い浮かべただけで、胸が詰まりそうになる。

 少し前のことになるが、緊急事態宣言が発令されて間もない4月中旬、東海大仰星の湯浅大智監督に電話で話を聞いた。その時の言葉が印象に残った。

「こんなにラグビーをしたい、みんなで集まりたいと思うことなんて、いままでなかったと思います。これほどのモチベーションを、コーチングで持たせることは到底できません。もろ手を挙げてチャンスとはいえませんが、この機会は生かしたい」

 その一方で、こうも語った。

「特に3年生にとっては、一度しかない年という気持ちは痛いほどわかります。でも僕自身、レギュラーではなかった子が卒業後にグンと成長する姿を、これまで何度も見てきました。もちろんラグビーで人間力を高めるという面もありますが、こうした経験でも人間は磨かれる。ラグビーに携わる指導者として、それだけは伝えたい」

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