コラム 2020.05.27

ラグビー金言【15】一人ひとりに合った声をかける。

[ 編集部 ]
ラグビー金言【15】一人ひとりに合った声をかける。
大学日本一にたどり着き、SO岸岡智樹を祝福する相良南海夫監督。(撮影/松本かおり)



 2018年度から早稲田大学ラグビー部の指揮を執る相良南海夫監督は、就任2年目にチームを11シーズンぶりの大学王座に導いた。
 1969年6月19日生まれで現在50歳。早大学院でラグビーを始め、早大、三菱重工相模原でプレーした。

 三菱重工相模原の監督を務めていた2006年度にはトップチャレンジリーグで近鉄を破り、初めてトップリーグへ。チームをひとつにした結果だった。
「あのときも、細かく、ああやれ、こうやれ、とは言わなかった。選手、スタッフと同じ目線になって、ゴールの絵を描いて信じ切った結果でした。全員が同じ方向を見る集団になったとき、目標に届く」

 早大監督就任直後、ラグビーマガジン誌上で自身のコーチング哲学を語ってもらう機会があった。

【相良南海夫監督の金言】

 自身が早大学院3年時に花園出場を果たしている。「目標に到達することを信じ切って、成せば成る、の精神でやったら本当に手が届いた」。人生に何度かある、そんな経験の最初だった。当時の竹内素行監督と、足繁くグラウンドに足を運んではアドバイスをした大西鐵之祐先生(早大教授/元日本代表、早大監督)。導いてくれる指導者の存在が大きかった。
「まず、大西先生と竹内先生が、ふたりとも絶対に花園に行けると信じ切っていた。だから僕らも同じ気持ちになれた。部には常に、決めたことをやり切る熱さや、やれると信じる空気があった1年でした。最初から無理だと思っていたら無理だし、指導者が本気で思い続けないと選手たちもそうはならない」

 早大ラグビー部を率いる立場になって。
「早稲田は毎年、日本一を狙うチーム。ただ、『荒ぶる』を歌うと言うだけで、口先と思いに乖離があるのが怖い。どれだけ学生たちを本気にさせるか。それが私やコーチの仕事」

 学生たちを、どうやってその気にさせるのか。そう問うと、「私はマジックも使えないし、言葉の魔術師でもないけれど」と前置きして言った。
「チームミーティングで発する言葉だけがすべてではないと思っています。一人ひとりに合った声をかけてその気にさせたい」

「やると決めた以上やる。自分に欲があるわけではありません。学生に勝ってもらいたい。勝ちたい気持ちを引き出すことに全力を尽くしたい」

 早稲田ラグビーについて。
「ちょっとでもミスしたら、つけ込まれる。そんな恐怖心を相手に感じさせるのが伝統の早稲田ラグビーだと思う。ノックオンしたら襲いかかられる。スコアされてしまう。無言のプレッシャーというか、相手にそういうものを感じさせたい。自分がプレーしているとき、イーブンボールに必死に飛び込んでいました。相手のミスボールにどれだけつけ込むかを考えた。CTBが(防御の)ウラに出れば素早く寄る。スコアまで持っていく。そういうことをやれるスキルも継承すべきです」


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