国内 2020.05.22

トップレフリーによる特別講義でチーム力UP!高校チーム対象の「オンラインチャレンジ」の募集がスタート

[ 多羅正崇 ]
トップレフリーによる特別講義でチーム力UP!高校チーム対象の「オンラインチャレンジ」の募集がスタート
写真は久保修平レフリー。写真は2018年にマイター10カップを吹いた時のもの。(撮影/Getty Images)



 トップレフリーの“特別講義”がスタートする。

 日本ラグビーフットボール協会の審判部門(レフリーチーム)は5月22日、ビデオ会議システム「Zoom」を利用した高校チーム対象の「オンラインチャレンジ」の募集を始めた。
 
 オンラインチャレンジは、トップレフリー達による同時双方向型のオンライン指導&交流会。
 試合映像を使ったルールクイズや質疑応答などを通じて、ルール理解やレフリーの認知を深めてもらうことが狙いだ。
 ワールドカップ2019日本大会で審判団の一人だった久保修平レフリーは「私たちレフリーにとってもチャレンジです」と意気込む。

「プレイヤーとレフリーが一緒にゲームを作っていくことの一環として、新型コロナウイルスの影響でゲームがなくなった週末を活用し、今後も継続してきたいと考えています」(久保レフリー)
 
 5月16日には九州の3校(筑紫、長崎南山、熊本西)を招待して、約50分×3セッションのトライアルが開催された。
 
 計10人のトップレフリーが3組に分かれ、画面越しに監督・コーチを含む3校130人の選手を指導。
 熊本西はコロナ禍による自宅待機期間を利用し、チームとしてルールの勉強をしていたから渡りに船だった。門脇永紀監督が言う。
 
「レフリーの方から生徒に直接オンラインで講義をしてもらうのは今回が初めて。ラグビーから心が離れていきやすい状況のなか、このような活動をやって頂けてありがたいです」(熊本西・門脇監督)

 トライアル講義の大まかな流れは、担当レフリーの自己紹介、試合映像等を使ったルールクイズ、そしてテーマだったブレイクダウンのルール指導。
 
 ルールクイズで使用された試合映像は、欧州6か国対抗戦「シックス・ネーションズ」から、ワールドカップ日本大会の日本×アイルランドまで多種多彩。
 選手達は「正しい判定は次のうちどれ?」「何の反則?」といった4択のルールクイズに挑み、チャット機能などで回答した。
 高校生にとっては画面越しながらトップレフリーの生解説を聞き、交流もできる貴重な機会となった。
 
「テレビで見ているレフリーの方々とコミュニケーションが取れたことは、生徒達にとって大きなことだったと思います。試合でレフリーの方とコミュニケーションを取れば良いゲームが作れる、と気づくことができたのでは」(筑紫・藤木佳行ヘッドコーチ)

 オンラインチャレンジではルールの基礎知識をチームで再確認できるのみならず、トップレフリーの知見に接することもできる。
 
「ルールの解釈の違いや、新しい情報を確認できました。ものすごく良い講義をして頂いて、楽しかったです」(長崎南山・久保田一平監督)
 
 たとえばブレイクダウンにおけるルール解説では、グラウンド上でジャッカルを防ごうとロールをしたりする「ダブルアクション」「エクストラロール」は今後反則になる可能性がある、と示された。まさに専門家ならではの最新情報だ。
 
 レフリーチーム側にもメリットはある。
 
 今回の挑戦を通じてレフリーチームとして一体感を保ちながら、ブリーフィングでの伝達力向上等に取り組める。
 プレゼンス(存在感)向上も大きな目的だ。
 ラグビーのレフリーは毎試合、6、7㎞というスクラムハーフ並みの距離を走りながら反則に目を光らせ、コミュニケーションを通じて円滑に試合を進行する、という離れ業に挑んでいる。
 しかし賞賛や注目を浴びる機会は少なく、プレゼンスの向上が課題になっている。
 
 ただオンラインチャレンジに参加した高校生達は、その言葉や態度から、レフリーもまたアスリートであることを直感的に理解するだろう。
 今回の交流を通じてレフリーを身近に感じてもらい、相互理解を深めながらレフリーのことを多くの学生に知ってほしい。レフリーに憧れる学生の登場も期待している。
 
 もちろんメリットのためだけに行動するのではない。オンラインチャレンジの大きな目的は「ラグビーの普及」「日本ラグビーの強化」と位置づけている。
 その心意気は、トライアルを受けた3校のキャプテンにも伝わったようだ。

「ルールをよく知ることで戦術の幅が広がったり、より良いプレーができる、と理解できました。今回の経験を全員で共有して、良いラグビーがしたいです」(熊本西・紫藤翔平 共同キャプテン)

「笛に対して不満を口にしたこともありましたが、レフリーの方にはしっかりした考えがあることが分かりました。熊本西は高校から始めた選手が多いので、チームとして参加して良かったです」(熊本西・越戸駿 共同キャプテン)

「レフリーの方がどういった視点で見ているかが分かり、微妙だった部分のルールについても確認できました。花園があると信じて、リーダー陣でモチベーションを上げていきたいです」(長崎南山・筒口允之キャプテン)

「今回のオンラインチャレンジを通して、一人ひとり違っていた価値観を統一できたと思っています。またレフリーの方もラグビーが好きで笛を吹いていると知ることができました。今回の経験を活かして、しっかり良いラグビーをしたいなと思いました」(筑紫・藤田 幹太キャプテン)

 オンラインチャレンジの応募詳細は、「日本ラグビーフットボール協会審判部門」のFacebookページに掲載されている。
 自宅にいながらトップレフリーと交流できる、貴重な経験になるはずだ。


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