各国代表 2020.05.03

元チームメートの「推し」も届かず。ピチョット氏、会長選に敗れる。

[ 編集部 ]
元チームメートの「推し」も届かず。ピチョット氏、会長選に敗れる。
若き日のふたり。ピチョット(左)とコンテポーミ。(写真/Getty Images)



 5月12日に発表される予定だったワールドラグビーの会長選の結果は、立候補していた2候補の同意を得て同2日に発表された。
 その結果、世界のラグビーをリードしていくポストには、現職のビル・ボーモント氏(元イングランド代表)が再び立つことになった。全51票のうちの28票を獲得した。同12日の理事会で承認され、正式に決まる。

 元アルゼンチン代表で、今回のもうひとりの候補だったアグスティン・ピチョット氏(現・副会長)は一騎打ちに敗れた。しかし、南半球の仲間の票を多く集めた。それは、変化を望んでいた国も多かったということだろう。

 投票直前には、現在レンスター(アイルランド)のBKを指導するフェリペ・コンテポーミ コーチ(アルゼンチン代表87キャップ)が、ピチョット氏がいかにワールドラグビー会長にふさわしいかアイルランドメディアに話した。

「昔から、強烈な個性を持っていて、みんなの先頭でトークで雰囲気を作るのがうまかった。彼とはピッチの内外で多く過ごしてきて、彼のラグビーを世界的に楽しまれるスポーツにしたいと願う気持ちの強さはいつも尊敬していた。彼は、その昔ラグビーがアルゼンチンの草の根に広がっていったように、まだラグビーが盛んでない世界の国にも広がっていくことを夢見ている」

 2002年から2007年までロス・プーマスのキャプテンを務めたピチョット。2007年から2011年まで彼のあとを引き継いだのがコンテポーミだった。
 ハーフ団でコンビを組むこともあった2人の絆は強い。

 コンテポーミは今回の会長選について、「彼がラグビーを世界に広めることに関して本気なのは、世界のファンに伝わっていると思う。今回会長になれなかったとしても、WRの幹部としては残るし、何と言ってもまだ若いからね。ラグビーは歴史が長いこともあって、各協会もWRも変革には少し後ろ向きなところがあるから時間がかかるかもしれないけれど、彼はラグビーの拡散に尽力し続けるだろう。アグスティンが会長になったら、ラグビーを広めるための組織編成なども進めると思う」と自身の見解も語っていた。

「もちろん一人ですべてこなせるはずはないから、彼のアイディアを各地で実践し、検証する人材も必要になる。多くの人の協力が求められるであろうこのプロジェクトが始まったら、どれだけの人間が実際にアイディアに賛同できるかが鍵になるだろう」
 コンテポーミは、ラグビー界の未来図をそう描いていたのだが…。

 ラグビーという競技の今後に大きく関わる会長選の結果、保守派のボーモント氏がこれからも先頭に立つことになった。
 伝統や利権にとらわれず、ラグビーの世界的な伝播を目指すピチョットが真のリーダーの座に就く日はいつになるだろうか。

◆フェリペ・コンテポーミ
アルゼンチン代表87キャップ、ポジションはSO、CTB。2007年からはピチョットの後を継ぎキャプテンとしてチームを牽引。正確なプレースキックで同代表の歴代得点記録2位。2014年に現役を引退後は、アルゼンチン協会のコーチングスタッフを務めた。2018年に、現役時代にプレーした古巣レンスターへ。BKコーチとして指導者のキャリアを積む。医師資格も持つ。


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