国内 2020.04.30
【コラム】これからの花園

【コラム】これからの花園

[ 野村周平 ]

 しかし、現実はそう甘くなかった。トップリーグとJリーグの期間が重複したため、昨季のトップリーグ王者神戸製鋼は、ヴィッセル神戸の本拠ノエビアスタジアムを今季1試合しか使う権利を得られなかった。ノエスタの管理運営権を所有するのはヴィッセルで、その意向が最優先で反映されるのは当然のことだが、長年ノエスタをホームとしてきた神鋼にとってみれば釈然としない出来事に映った。

そして今回の花園でも、サッカーとラグビーの微妙な関係は明らかになった。

サッカー界はJリーグ発足以降、野球と肩を並べるプロスポーツとして全国のスタジアム整備を少しずつ進めてきた。ビジネスである以上、ラグビー界がそこから譲歩を引き出すのは、そう容易ではない。

ただ、一つのスタジアムでラグビーやサッカーを楽しめるなら、その地域やファンにとって理想的な形となる。コロナ収束後のスポーツがどうなるのかはまだわからないが、スタジアムに集まって応援することの価値は今まで以上に高まるはず。その日を見据え、日本協会はサッカー界との共存のあり方を本腰を入れて探ってほしい。花園はその試金石となるはずだ。交渉の余地はまだ残っている。

【筆者プロフィール】野村周平( のむら・しゅうへい )
1980年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、朝日新聞入社。大阪スポーツ部、岡山総局、大阪スポーツ部、東京スポーツ部、東京社会部を経て、2018年1月より東京スポーツ部。ラグビーワールドカップは2011年大会、2015年大会、2019年大会、オリンピックは2016年リオ大会、2020東京大会などを取材。自身は中1時にラグビーを始め大学までプレー。ポジションはFL。

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