【コラム】これからの花園
市の決定に対し、日本協会を含む事業者グループは質問状を送付。明らかになっていない選考過程の情報公開を求めるという。しかし、決定を覆すことはできないだろう、と事業グループの関係者は見ている。
元々、東大阪市とFC大阪の距離は近かった。昨年1月、両者は地域活性化のための連携協定を結んだ。11月には、FC大阪が花園第2グラウンドに5千席以上の観客席を寄贈する計画が発表されていた。大阪から3番目のJリーグチームを目指しているFC大阪にとって、地元でホームスタジアムを確保できる意味は大きい。市から見ても、税金を投じることなく客席の整備を進め、利用者にも喜んでもらえる。そんなウィンウィンな関係を土台とする共同体の案を上回る計画を、事業者グループは提示できなかった。日本協会関係者は「ラグビー側の見立てが甘かった」と認めている。
市はラグビー場の運営は「今までと同じ方針」と強調しており、当面は高校ラグビーなどの利用は今まで通りできそうだ。ただ、関係者によると、公募の際に日本協会幹部が「サッカーとラグビーが共存するモデルケースを」とタッグを呼びかけたにもかかわらず、FC大阪にないがしろにされた経緯があったという。花園ラグビー場を本拠とする近鉄ライナーズにも警戒感は広がっており、チーム関係者からは「この先ライナーズは花園にいられなくなるかもしれない」という不安の声も出ている。今回の決定に対するラグビー側のわだかまりは小さくない。
昨秋のW杯日本大会の成功は、サッカー界の協力なくして成り立たなかった。横浜や東京など主要会場の多くはJチームの本拠地で、芝生が傷つくリスクを承知でラグビーのために会場を空けてくれた。一方で大会前には秩父宮ラグビー場をFC東京が本拠として使用した事例もあった。私は、W杯を契機にスタジアムにおけるサッカーとラグビーの共存がより進むのではないか、と期待していた。