コラム 2020.04.02
【コラム】苦しい時こそ。

【コラム】苦しい時こそ。

[ 直江光信 ]

 2010年のアジア大会は5位だった。現地で取材した知人記者が、「とてもオリンピックなんてイメージできないくらいの差があった」と漏らしていたのを覚えている。そこからの5年間、大袈裟でなく血のにじむような鍛錬を重ね、極限まで追い込まれる状況を何度も経験して、到底手の届く位置にはないように見えたブラジル行きのチケットをつかんだ。

 絶望するほどの困難を乗り越えて女子ラグビーの新しい扉を開いた人のチームを語る言葉に、感心を越えて尊敬の念を抱いた。

 いまあらゆる場面にストレスは充満する。

 思い通りにいかないことがあると、ついフラストレーションのはけ口が誰かへ向かいそうになる。そんな時、一人ひとりが、自分以外の人のために思いを馳せられるか。そして、誰もがそれぞれの立場で懸命に奮闘していることを理解したうえで、自分に何ができるかを考えられるか。それが、先の見えないこの難局を乗り切るための第一歩だと思う。

 現状はっきり効果ありとわかっている対策は他者との接触を可能な限り避けることしかない以上、何をしなければならないかは明白だ。そうした中、多くのアスリートやスポーツチームが、SNSやwebサイトを通じてさまざまなメッセージを発信してくれている。競技でその勇姿を見られない時だからこそ、そのひと言ひと言は心に染みる。憂鬱なニュースばかりが目につく中で、ポジティブな姿勢がどれほど塞ぎ込みそうな気持ちを明るくしてくれることか。ヨーロッパやアメリカに拠点を置く日本人選手が母国へ向け鳴らす切実な警鐘にも、とてつもない重みを感じる。

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