名手たちは淡々と準備。クボタの「クロッツ」、守備でチームをリード
「このチームには選手だけではなく、スタッフに熱がある。プロラグビー選手として、幸せな環境だと思っています。僕はディフェンスを見るコーチたちと一緒に歩んでいます。今はコーチが提示するディフェンスに対して、経験のあるプレーヤーとして側面支援することが大事だと思っています」
チームはこの休止でクボタは、昨年トップ2の神戸製鋼、サントリーとの対戦を失った。4月、再開がもしかなえば、初戦はヤマハ発動機、昨年3位チームとの激突だ。
「チームメートを兄弟のように感じている」
仲間は彼をクロッツ! と親しみを込めて呼ぶ。31歳のNZ代表は周囲のメンバーと、より結束を固めてリーグ再開を待っている。
最後に余談。新型のウィルスが世界を駆け巡る中で、各チームのメディア担当者は大変な苦労をしている。この日も、選手とチームを守るための対策をいくつも施して、取材機会をなんとか作り出してくれた。そんな苦労を知った上で、選手がどう振る舞ったか。クロッティの所作は際立った。
にこやかに、約束より早めに取材の場に現れたクロッティは、撮影準備に没頭するカメラマンに近づくと、身をかがめて声をかけ、笑顔で握手を求め初見の挨拶をした。外部者の方が遠慮してしまうくらいに、フレンドリーだ。こんな時だからこそ、なのかもしれない。
セットされた照明器具の前に自ら立って「さあ、やろうよ! どっちを向けば?」。撮影に談話。取材は結果的に、予定よりも少し早く終わった。
「いつも、ああなんですクロッツは」
クレバーさと献身で鳴らした元プロップの広報スタッフ・イワツメさんが、独り言のように言う。
「ファンにも自分から近づいて、頼まれる前からサインや記念撮影を促す。チームの中でも、彼の周りにはポジティブな空気が流れると言うか。オールブラックスって、本当にすごいんだなと。はい、人間性が」
ラグビーファンにとっては寂しく、もどかしい日々が続く。名手たちは今、準備にベストを尽くしている。