ワールドカップ 2020.03.12
【コラム】釜石のワールドカップは、まだ終わっていない。

【コラム】釜石のワールドカップは、まだ終わっていない。

[ 野村周平 ]

 W杯をきっかけに交通アクセスは大幅に改善されたとはいえ、釜石鵜住居復興スタジアムは決して利便性の高い場所にあるとはいえない。県内外の人をどう呼び込むか。そんな命題を抱える「祭りの後」の釜石市において、世界中に発信できるストーリー性をもった試合を開催することの意義は大きい。

 一方で、今後も定期的に行うことが難しい単発の試合開催だけでは、スタジアムの持続性を担保することはできない。

 市民の関心や懸念は、採算の見通しに向けられる。スタジアムの年間維持費は約4千万円(主な内訳は芝生や機械設備の管理費2200万、人件費1200万、電気など消耗品500万円)。できるだけ収入を増やして、収支をゼロに近づける施策が求められる。

 今のところ、利活用の中心と考えられているのはラグビーを中心としたスポーツだ。

 現在トップチャレンジの釜石シーウェイブスは、2021年に始まる予定の新リーグへの参加意向を表明している。サッカーJ3のいわてクルージャ盛岡、日本製鉄釜石サッカー部などもスタジアムの定期使用に関心を示しているという。釜石市は音楽イベントの誘致などの働きかけも強める意向だ。

 ただ、有料イベントの使用料は1時間あたり5万270円。これまでの実績ではトップリーグの試合でも実入りは数十万円程度で、使用料収入だけで維持費をまかなうことは不可能に近い。そのため釜石市は広告協賛やネーミングライツ、民間事業者への運営委託などを模索し、’20年度内に具体的な運営指針を決めるとしている。

 市の年間予算は20年度が約279億円。その中で4千万の出費は決して高いわけではない。W杯後のことを考えてスタジアムを質素な作りにしたことの成果といえる。一方、W杯時に設置した1万人分の仮設席を撤去したため、日本ラグビー協会が新リーグ参入の要件として掲げた「1万5千規模のスタジアム保有」という条件はクリアできていない。痛しかゆしの現状も浮かび上がる。

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