国内 2020.02.18

託された NTTコムSO松尾将太郎の思い

[ 見明亨徳 ]
託された NTTコムSO松尾将太郎の思い
トップリーグ初得点はゴールキック。自らの絡みが起点になった(撮影:見明亨徳)


 2月15日、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスは、トップリーグ第5節、宗像サニックスブルースを12トライ74-11で退けた。
「(きょうの出来は)60点くらい。持ち味は出せたのかな」
 後半17分から司令塔SOを任されたNTTコムのルーキー松尾将太郎。リーグ戦デビューのパフォーマンスを答えた。

 チームにとりこの試合、司令塔は大きな意味をもっていた。前日の2月14日、2015年度に入団以来、その役を担いチームとともに成長してきた小倉順平の退団が発表された。退団理由はスーパーラグビー・サンウルブズへの移籍だ。
 内山浩文GMは小倉から「去年からサンウルブズへ行きたい」と相談を受けていた。継続的に数度の話し合いがもたれた。そして「リコー戦後(トップリーグ第4節。2月2日、33-17で勝利。小倉はFBで先発出場)、話があり認めました。1日のサンウルブズ勝利を見たことも大きかったと思います」。

 今季、NTTコムの先発SOは第1、2節が小倉。3節からオーストラリア代表のクリスチャン・リアリーファノに。「決して小倉の話で選んだことはない」(内山GM)。
 サニックス戦でもリアリーファノが10番を背負った。リザーブに松尾が選ばれた。2018年度、明大4年生時に母校22年ぶりの大学日本一奪還に貢献した司令塔だ。
「順平さんからは、発表前にラインで連絡をくれました。それからチームのことも話しました」と松尾。
 昨年春にNTTコムへ入団。6月~7月、ワールドカップ前に開催されたトップリーグカップ2019はプール戦わずか1試合の出場にとどまっていた。

スタンドから熱心に松尾将太郎を応援する人たち(撮影:見明亨徳)

 サニックス戦、試合はすでに50-11と行方が決まっていた。「点差が開いている。締めて終わろうと」ピッチへ。5分後、自陣ゴール前で味方がターンオーバーしたボールを蹴りだす際にミス、相手にチャージされた。しかしボールは、味方が確保し事なきを得た。
「10番は司令塔。リーダーシップを発揮する」。以後は積極的にチームメートとコミュニケーションをとっていく。アタックでは素早いボール回しをする。一方、サニックスディフェンスに隙間があれば自らランで仕掛けていった。
 27分に主将FL金正奎がインゴール左中間へ、33分はNO8アマナキ・レレイ・マフイがスクラムから持ち出し右隅へファイブポインターとなる。トライ後のコンバージョン、松尾は2本とも外しトップリーグ初得点を逃した。得点は60-11となった。
 ここから松尾が魅せた。36分すぎ、サニックスが自陣10メートル線で右へ展開する。味方がタックルで止める。松尾はラックに2人目で入るとサニックスWTB香川凛人にからんでノットリリースの反則を誘った。自ら22メートルのタッチへ蹴りだす。チームは左ラインアウトから攻撃、ゴール前でラックを作ると最後はPR平井将太郎がポスト右へ飛び込んだ。ゴールキックを松尾は成功。試合終了前、マフィがトライを奪うと2本目のコンバージョンも確実に決めデビュー戦を終えた。

 松尾を起用したヒュー・リース・エドワードHCは「練習でも積極的。(試合に出ることで)成長する」。金主将も「将太郎は順平を脅かす存在になってきていた」と言葉を贈った。
 松尾は話す。「(順平さんの退団は)いいチャンスと思います。チームメートの信頼を得ていきたい。順平さんは目標としていた。同じレベルでプレーできるように」。

 この日、明大からNTTコムに一緒に進んだ同期PR齊藤剣も松尾の7分後にデビューを飾った。「一緒に切磋琢磨していきます」(松尾)。
 チームでその大きな背を追われるリアリーファノは、笑顔で松尾を「ライバルではない。友だち」と認め評した。

明大同期PR齊藤(写真・右)と同日デビュー(撮影:見明亨徳)

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