国内 2019.12.29

高知での3年間で、またラグビーが好きになった。160センチのPR、中田将悟の青春。

[ 編集部 ]
高知での3年間で、またラグビーが好きになった。160センチのPR、中田将悟の青春。
小さな体も前へ出る意志は強い中田将悟。(撮影/早浪章弘)



 トンガからの留学生だけでないから、ラグビー熱狂地帯のひとつ、秋田の代表校相手に前半を終えて24-5と19点のリードを奪えた。
 花園ラグビー場で開催されている全国高校大会の2日目に登場した高知中央は、秋田中央を試合開始直後から圧倒した。

 前半2分のトライはNO8シオネ・マウが決めた。FW全員でゴールラインに近づいたから飛び込めた。
 同11分のトライはFL滝川裕也が鋭く防御ラインを切り裂く。18分、28分にもマウと滝川がインゴールに入るも、序盤の2トライ同様、チーム全員で作った好機を仕留めたものだった。

 後半は無得点に終わり、最終的には24-26と逆転負けを喫すも、勝利に近づいた高知中央には「いい試合をありがとう!」の声が観客席のあちこちから届いた。
 あたたかい拍手の中で、選手たちは涙を流し、仲間と抱き合った。

 その中に小さな背番号1がいた。
 同校の1番、3年生の中田将悟は160センチしかない。体重は85キロ。ギュッと筋肉の詰まった体躯は、スクラムで奮闘する以外にボールを持ってもよく働く。低い姿勢で前へ出るボールキャリーでもチームに貢献した。

 トイメンはいつも自分より大きい。この日の秋田中央の3番、吉原龍磨も180センチ、108キロ。20センチ、20キロの差があった。
 でも、サイズの違いは練習で克服できると信じて積み上げてきた。
「うちは、ものすごく(練習でスクラムを)組みます」
 練習試合で負けると、グラウンドの縦をスクラムで一往復する『スクラムラン』と呼ばれるものがおこなわれる。「やっぱりスクラムは、チーム全体に勢いを与えられるので。僕自身は、この低さを武器にしない手はない、と考えてやっています」と話す。

 逆転負けを「後半にテンションが下がってしまったところから修正できなかった」と振り返る小型PRは、大阪の出身だ。高知にやって来て3年。その日々を終えて、「終わってみれば楽しかった」と笑う。
「1年生のときの練習とか、しんどい時期もありましたが、最後に花園にも出られたし充実していました。いちばんの想い出ですか? うーん、たくさんあり過ぎて、分かりません。最初は(高知は)畑しかないな…とか思い、大阪とのあまりの違いにショックを受けましたが、みんなで釣りに出かけたり、寮で料理をしたり、いろんな経験ができました」

 ラグビーは大阪・菫中で始めた。
「ただ、中学1年の途中から2年生の後半まで、いろんなプレッシャーを感じて学校に通えなくなったんです。でも、学校に行くようになり、またラグビーをやって、そのときに菫中の卒業生で教えに来てくれていた(現在、高知中央高校コーチの)岡田コーチが『どうすんねん』と気をかけてくれて、この高校のことを教えてくれたんです」
 寮に入ればダラダラした生活もしなくなると覚悟を決めた。その決断を支持してくれた家族や友だちもこの日は駆けつけ、必死に戦う姿を応援してくれた。

 親元から遠い南国の地での生活は、一度は離れたラグビーをあらためて好きにさせてくれる日々だった。
「2年生になった頃からラグビーが楽しくなって、結果もついてくるようになった。坂道でのスクラム練習もあったけど、そういうことをやったから、いまがあると思えます。ラグビーやってホント、良かったです」
 だから大学でもプレーを続けるつもりだ。
 ただ、進学する大阪産業大学では「痩せてスクラムハーフかフランカーをやりたい」。ラグビーをもっともっと楽しみたいのだろう。


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