国内 2019.12.17

梶村祐介は、4年後のW杯出場へ「新しい自分」になる。注目の進路は。

[ 向 風見也 ]
梶村祐介は、4年後のW杯出場へ「新しい自分」になる。注目の進路は。
リコーとの練習試合後、サントリーサンゴリアスのチームメイトと円陣を組む梶村祐介(撮影:向 風見也)


 目の前の相手へ向かってまっすぐ走りながら、大外へロングパスを通す。簡単なように映って簡単ではない技術を、サントリーの梶村祐介は披露した。

 2019年12月14日、東京・リコー砧グラウンド。リコーとの練習試合に後半から出て、38-10で勝利。「前半から相手のやるラグビーを理解して入れたので、予測してプレーできたと思います」と締めた。

 今年はラグビーワールドカップ日本大会に向け、日本代表入りを争う長期合宿に参加してきた。ナショナルチームのジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いるウルフパックへ入り、海外のプロ予備軍と対戦した。

 だから「1年間、ジェイミージャパンでトレーニングはしていましたし、上を飛ばすパスは得意な方ではある。ラッシュアップの(鋭く前に出る)ディフェンスをするチームは多いので、(ロングパスでその背後を突く)チャンスは出てくると思います」と手応えを語るが、悔しさも隠さない。

 ワールドカップ出場が叶わなかったからだ。約60名いた代表候補が40名程度に絞られた6月以降は宮崎でのタフな合宿に加わりながら、その後に開かれた国際大会のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)のメンバーからは外れた。北海道・網走での最後のサバイバルキャンプへは参加も、逆転当選には至らなかった。

「網走で実際にワールドカップから漏れたという通達を(受けた)。PNCに行かなかった時点である程度難しい位置にいるのは理解したので、落ちた時はしょうがないなという部分と、最後までいたのだから選ばれたかったという部分とがありました。悔しさを呑み込もうともがくというか、初めてああいう心境になりました」

 報徳学園高3年時に初めて日本代表の練習生となった身長180センチ、体重96キロのCTBは、ロシア代表とのワールドカップ開幕戦の7日前に24歳になっていた。当時は本体に故障者が出た場合に代役となるべく心身を整えていたが、ワールドカップ関連のニュースとは距離を置きたかった。

「メンバーに何かがあった時にコミットしようと、コンディションの準備はしていました。ただロシア代表戦が始まるまでは、ワールドカップの情報が入ってくるのを嫌がるような感覚がありました。SNSを見れば必ず目に入ってきますが、それにも『また出てきたよ』という感じです」

 選ばれた31名の日本代表戦士は、ワールドカップで大躍進を果たす。9月28日の2戦目では、開幕直前に世界ランク1位だった強豪のアイルランド代表を19-12で撃破。静岡・エコパスタジアムに歓喜を生んだ。その後も着実に白星を重ね、史上初の8強入りを果たす。

 一方で梶村は、このアイルランド代表戦を受けて自身の終戦を悟った。

「あそこまでいけば、大きな怪我があろうとも残ったメンバーで補充できる」

 所属するサントリーへは11月から合流することが決まっていたため、10月上旬、少し休暇を取った。心機一転。2023年のワールドカップ・フランス大会で日本代表入りするには、「いままでの自分のスタイルを変えないといけない」と心に誓っている。

「変えることは勇気がいるし、何が必要かは模索中ですが、間違いなく言えるのはディフェンスを強みにしないといけないということ。でないと、4年後もまた同じように出られないと思う」

 相手防御の隙間を豪快に破るのが、梶村の真骨頂だ。しかし現在はリコー戦で披露したパスに加え、一時は苦手だったという守備にも注力。特に「ビッグゲームで支えになるのはディフェンス」と、その詳細にこだわりたいという。

「僕は多いのは、間合いには入るけど、(タックルを)外されるということ。最後まで踏み込んでコンタクトエリアに入ることはかなり意識しています。大きな選手にタックルしたいと思えるような準備をしていきたいです」

 サントリーのCTBで防御と言えば、4歳年上の中村亮土のことは無視できまい。日本代表が参加したワールドカップ全5試合に先発した中村は、アイルランド代表戦でBK陣最多のタックル数を記録するなど世紀の「ビッグゲーム」を引き締めた。危険地帯を素早く埋めたり、鋭い出足で飛び出して相手の攻める位置を限定したりと、テレビ画面には映りづらい献身ぶりも光った。その現実を梶村は、真摯に受け止めている。

「同じポジションの選手として、認めたくないところ、認めなくてはいけないところの両方(の気持ち)がありますが、亮土さんのディフェンスへの姿勢は見習うべきものだと思います。まずは、チームのコンペティションに勝ちたいです。かといって、自分の強みを失いたくない。新しい自分になれるようチャレンジしていきたいです」

 今季のトップリーグは2020年1月12日に開幕。2月1日には、日本のサンウルブズが国際リーグのスーパーラグビー初戦を迎える。

 一部のワールドカップ組がトップリーグに専念しそうななか、直接的、もしくは間接的にサンウルブズ側からのラブコールを受けている中堅、若手の日本人勢がいる様子。梶村もその例外ではなさそうだが、サントリーは全選手へ「必要な戦力」とトップリーグへの専念を求めている。

 もしかしたら岐路に立たされているかもしれない梶村は、両者に迷惑のかからない形で信じた道を歩みたいという。どちらへ行っても「欲しているゲームタイム」を得るための競争は避けられず、どちらに行っても名手との対戦を経験できそうなのは確か。いずれにせよ、「新しい自分」を探す旅は始まったばかりだ。

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