「罰走」が反則減らす? 日本代表ツイが明かした普段の意識とは。
ツイ ヘンドリックはニュージーランドのオークランド出身で、帝京大を経て現在はサントリーに所属。2014年に日本国籍を取得している。
身長189センチ、体重108キロの31歳で、フォワード第3列として強力なランを繰り出し、2015年度からの3シーズンは、国際リーグのスーパーラグビーにオーストラリアから加わるレッズの一員としても活躍した。
10月5日、愛知・豊田スタジアム。日本代表の一員として、2大会連続出場となるワールドカップの日本大会の大一番に出る。3連勝をかけたプールA・第3戦は、両親の祖国でもあるサモア代表が相手だった。
ベンチ入りしたツイは、後半23分に途中出場してインパクトプレーヤーとして存在感を示す。同35分の福岡堅樹のトライまでの過程では、右タッチライン際の好走を披露した。サモア沖地震があった2009年は大学生だったツイは、改めてこの日の意義を語った。
「サモアの地震で亡くなられた方たちのことは、常に自分の気持ちのなかにあります。サモア代表と戦うときは毎回気持ちが高ぶります。ワールドカップでサモア代表と戦うのは(前回のイングランド大会時に続き)2回目。今回は父親も観に来てくれていたので、高ぶる気持ちは父に預けました。自分は自分で、自分のやるべきことにフォーカスしました。2勝を挙げた後の試合だったので勢いを止めないため、気負いしすぎないよう、自分の役割にコミットしました」
13日には神奈川・横浜国際総合競技場で、スコットランド代表とのプール最終戦に挑む。7日には都内で共同取材に応じ、来るべき大一番について談話を求められる。
踏み込んだ領域については「まだあまり言えません」と言葉を選んだが、興味深い逸話も明かす。非公開練習でおこなわれているであろう、「罰走」についてだ。
「…の時は、罰としてゴール前に並んでフィットネスを…」
大会前の日本代表の課題のひとつに、レフリングへの対応力があった。2018年のイングランド代表戦では、自軍ボールの接点で相手をはがすサポート役の動きが後半になって反則の対象になりだしたと選手が証言。今年のパシフィック・ネーションズカップでもスクラムがつぶれた際、低く組む日本代表が厳しくとがめられた様子だ。
日本代表の兄弟チームであるサンウルブズも、今季のスーパーラグビーで反則過多に泣く。10分間の一時退出を促すイエローカードの数はリーグワーストの10をマークした。
ところが本番へ入ると、他国が危険なタックルでイエローカード、退場を命じられるレッドカードに泣くなか、日本代表が参加した3戦で相手より多く笛を吹かれた機会は0。イエローカードも一度ももらっておらず、相手より3つ少ない反則数を記録したアイルランド代表戦では対するジョー・シュミット ヘッドコーチが判定に不服を申し立てたほどである。
いったい何が、ここまでの違いを生んでいるのだろうか。今季のサンウルブズにも長くコミットしたツイは、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの練習中の指令を例に挙げてこう答えた。
「練習中から『テストマッチ(代表戦)でペナルティをしてしまうと、いかに簡単に負けるか、いかにゲームがひっくり返るか』というようなシナリオをコーチ陣がやってくれているので、そのなかで危機感というか、どれだけペナルティをしてはいけないかという規律面の自覚ができた。それが、こういう結果につながっています。ペナルティをしてしまうと簡単にトライを持っていかれることへは、ジェイミーからもきつく指導がある。練習でも不用意なペナルティをした場合は、罰としてゴール前に並んでフィットネスをやらされた。そのなかでも意識が高まりました」
現日本代表は、担当レフリーを事前合宿に呼ぶといった3勝した4年前のイングランド大会時のような荒業はしていない。しかし、根本的な順法精神の強化で課題を克服しつつある。
長谷川慎スクラムコーチは、レフリングのトレンドを踏まえて形や高さを微修正。さらにワールドラグビーから巡回するレフリーのクリス・ポロック氏が全般的な助言も施している。ツイも「ポロック(の存在)は非常に助けになった」とうなづく。
史上初の8強入りへ負けられないスコットランド代表戦でも、クリーンな戦いを目指す。