【ラグリパWest】ラグビーの伝道師。 横井章
ワールドカップがなかったその昔、日の丸を背負った。わずか164センチの上背ながら、CTBとして世界と渡り合った。
横井章は今、孫よりも若い世代にもラグビーを説き、伝える。
喜寿をひとつ越えても、京都近郊の自宅から全国の現場に足を運ぶ。この夏には合宿参加のため長野・菅平にも上がった。
笑えば、並びの良い白い歯が現れる。
「もう100チーム以上は教えたよ」
社会人では近鉄、大学は帝京、関西学院、高校は京都成章、尾道、静岡聖光学院など。クラブチームの要請も引き受ける。
この国における競技力向上に資することがライフワークだ。
「ラグビーで大切なのは、精度を上げる、ということや。そのためには練習あるのみや」
関西弁で絶対的な時間量の大切さを言う。大阪・大手前から一浪して早大の政経に進んだ。その時、バスケットからラグビーに部活を変える。初年度は正午から夜8時まで東伏見のグラウンドにいた。
落球を見ると声をかける。
「ボールを受ける時はボールだけを見る。前を見たらあかん。人間は2つの仕事をいっぺんにでけへんのや」
9月14日からの敬老の日の3連休、横井の姿は福岡県のうきは市にあった。
浮羽究真館を率いる若き監督・吉瀬晋太郎から臨時コーチを頼まれる。この県立高校を教えるのは2年前の春以来2回目になる。
吉瀬はブログで横井の存在を知った。
『横井章の魅力あるラグビー』は2010年7月にスタート。体験や考えが書き込まれる。今年8月に<一旦、休憩>。1388回に及びながらの休止理由は<文章だけで表現するにはほぼ限界に来ている>。コメント欄を使っての質疑応答は続けている。
このブロガーに吉瀬は大きな尊敬を送る。
「横井さんは確信があり、個々の役割を明確にして下さいます。来ていただけなかったら、と思うとぞっとします」
34歳の吉瀬は統合前の浮羽の出身。京産大ではCTBとして公式戦に出場する。2015年4月に保健・体育教員として赴任。ほぼ無名のチームを就任5年で1月の新人戦、5月の春季大会と連続して県4強に押し上げた。
ただ、県の頂点には難敵がいる。「ジャイアント」と称される東福岡だ。冬の全国大会優勝6回、歴代4位の記録を持ち、19年間途切れず大会出場を続けている。
浮羽究真館は準決勝でともに「ミスマッチ」と呼ばれる100点ゲーム(0−103、0−113)を完封で食らわされた。
目標として「10年で高校ラグビー日本一」を掲げる吉瀬にとって、横井は限界突破のための必要不可欠な人材になっている。そのセッションは午前と午後の計4回。地域による攻めや守りなど、こと細かに授けられた。