中村亮土が語る手ごたえ。自身初のワールドカップへ何を修正する?
ラグビー日本代表のディフェンスリーダー的な役割を担う中村亮土。9月6日は埼玉・熊谷ラグビー場で南アフリカ代表に7-41で敗戦も、フェーズが重なるなかでの組織防御には手ごたえをつかんだ。
事実、失点はキックの蹴り合い、セットプレーからの簡潔な攻め、被インターセプトなどがきっかけ。攻防が重なった際の守備網は概ね機能し、中村自身もタフなタックルを重ねていた。
例えば前半14分頃。グラウンド中盤右中間で南アフリカ代表のオープン攻撃へ鋭い出足で圧をかける。数的優位を作られているなか、相手のエラーを誘った。感想はこうだ。
「ジャパンがしているディフェンス(システム)のなかで、僕がその場にいてやったことです」
見据えているのは、9月20日からのラグビーワールドカップ日本大会。南アフリカ代表戦では、孤立した味方WTBの周辺へ何度もキックを蹴られている。そのため中村は「キックプランのプレッシャーはあった」としたが、他選手の証言によればその修正方法についてはすぐに話し合った様子だ。
「(本戦でぶつかる)アイルランド代表、スコットランド代表もキックプランを用意してくる。それに対して(詳細を)詰められる部分は詰められる」とする中村は、詳細を聞かれ「言わないです」と応じ、うっすら口角を上げた。相手の強烈なタックルに差し込まれた攻撃場面については、かような見解を示す。
「特にこちらが敵陣22メートルエリアに入ってからの狭いチャンネル(接点周辺の防御)は強かったので、もっと外(のスペースを)使うなど、攻撃の仕方を考えていかないと」
とにかく、ベクトルを向ける先は自分たちのあり方だ。南アフリカ代表と自軍の差について問われれば、こう総括する。
「(相手は)プランの遂行力が高く、変なことをしない。これと決めたことを、全員でやってくる。僕らには細かいところのミスがあった。相手ディフェンスからプレッシャーを受けたわけではないのですが、僕らがいい形でボールを動かせたなかでの(細部の)遂行力は少し低かったです。チャンスをたくさん作れたなか、細かいサポート、パスのミスがマイナス点になった。ここを改善すれば、もっといいゲームができる」
身長178センチ、体重92キロ。帝京大の3年だった2012年に初めて日本代表となるも、2015年のワールドカップイングランド大会時は日本にいた。加入したてのサントリーで出番がなかったこともあり、14年6月を最後に代表から落選。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる現体制下にあっても、強化機関のナショナル・デベロップメント・スコッドでいちからのアピールを求められた。
転機は、2017年秋にあった。日本代表の欧州遠征で控え組にいた中村は、フランス代表戦前のトレーニングで主力組へタフに衝突。分析内容に基づき助言も送り続けた。
試合は23-23でドロー。「意志を持って生活できた」という実感を得た頃には、首脳陣からの視線が変わったようにも感じた。「なんとなく、気にかけてもらえるというか。僕という人間を知ってもらえた」。翌2018年秋の敵地でのイングランド代表戦時は、先発してトライも決めた。
「1パーセントにもならない働きかけをすることで、チーム全体がよくなっていくというか。誰がどう評価するかじゃなく、自分に意志があるかどうかの話で」
自分にフォーカスを当てて、悔いなく挑んできた。その向こう側に大舞台がある。